ミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」‐演技も魅せる、カイが進化?

さてさて、ミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」の感想続き。しつこいようですが「ジャック・ザ・リッパー」はシンドリム、Dキューブアートにて2016年10月9日まで上演中。今回主役のダニエルにキャスティング されているのは、リュ・ジョンハン先生、オム・ギジュンさんとカイさん。

どの方を選択するべきか、ミュージカル好きには悩ましい。さらに、ジャックを追う刑事 アンダーソンには、年末から年明けにかけて日本キャストで上演される「ミス・サイゴン」に出演が決まったパク・ソンファンさんが。さらにさらにミュージカル「モーツァルト!」終了 後は、キム・ジュニョンさんがアンダーソン役で合流。「ミス・サイゴン」のキャスティングをみて気にになっていた人、薬中ふらふらなジュニョンさんを見たい人は是非! というキャスティングです。

で、まず見て来たのがカイ、パク・ソンファンペア(?)なのですが。ソンファンさんについてはまた別記事にまとめるとして。今回はダニエルを務めるカイさんの魅力に迫ってみたいと思います。

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熱血バカ力全開のダルタニャンから一転、苦悩する青年医師ダニエルに)

演劇効果?

ジャック・ザ・リッパー」の一作前、カイさんは、抽象表現主義を代表する画家、ロスコ―の生涯を描く2人演劇「RED」に出演。オペラ・ポップ歌手としての「歌」を封じての演技修行。残念ながら見に行けなかったのですが、カン・シニル、ハン・ミョングという渋い(?)おっちゃんたちが演じるロスコに「世代交代」を迫るケンを勤め上げました。ロスコの役者さんたち、どっちも半端ないおっちゃん力。どんな舞台だったのかきになります。

www.youtube.com(カン・シニルさんって誰だっけ?とう方も、この映像をみたら、あ、あのドラマでよく見るおじさんか!とわかるはず)

「RED」のインタビューでは、自分が演じるケンが芸術を尊敬し、心の中にある傷や痛みを彼は美術に、そして自分は音楽に表現しようとする限りない渇きのようなものを抱えている点が似ているのだとも答えていて、カイさんにとっての音楽が、とても深い自己表現の手段なのだというところが垣間見えます。それを封印しての演技修行ですからね!成長もしようというもの。

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音楽と台詞の力

演劇「RED」を経た新バージョンのカイ。今回のダニエルを見ていて、確かに、え、なんか演技力アップしたんじゃない?という気がしました。「マリーアントワネット」の白王子フェルゼンや「三銃士」の天真爛漫熱血漢の「少年」ダルタニヤンとはまったく違う、まじめで (ちょっと思い込みが激しく)純粋な「青年」をリアルに生み出していましたよ。歌はもちろん絶対的にうまいのですが、かなり感情をのせて台詞的に歌う(というか、朗読する?)部分ももりこま れており(でも音楽として破綻はしない)、演技的に見せる部分と、音楽によって聞かせ、感情を表現する部分がうまく使い分けられていました。秀逸な演劇 と、ミュージカルを同時に見ているような気分。

考えてみればミュージカルの楽曲には、情景や経緯を「説明する」部分と、それをへてキャラクターの感情を「表現」するものがある。それぞれをどの程度台詞のままにするのか、曲として歌い上げるのかで大きく場面の印象が変わる。今回カイさんの演技は、このバランスのとり方が、ミュージカルの演劇度を調整する一つのポイントになっているのだな!ということを実感させてくれたのでした。

影としてのジャックとの戦い

(ネタバレなんで、結末にかかわる部分を知りたくないという方はご注意!)。「ジャック・ザ・リッパー」では、2幕終盤にジャックはダニエルが生み出した妄想であることが明らかになり、ジャック役の俳優さんとダニエル役の俳優さんが二人で1人の人物(ダニエル)の二面性を歌うという「내가 바로 잭(私/俺がジャック)」という曲があります。ミュージカル「ジキル&ハイド」の見せ場・名曲「対決」では1人の役者さんが自分に住まう2人の人格を歌いわけるのですが、「ジャック・ザ・リッパー」では2人で1人を演じるという荒業が展開。これはこれでとっても見ごたえのある曲なのです。

ジャックとダニエルは曲の途中、ジャックのように歌うダニエル、ダニエルのように歌うジャックになったりもして、2人の俳優さんの呼吸と歌い分け力が問われます。ここでも、カイ・ダニエルは見事にジャックになっており、見ごたえがありました。うーん、カイさん、こうなったら「ジキル&ハイド」もいっとくか。

だれかカイ・ジキル、キャスティングしてださいー!