韓国ミュ-ジカル『三銃士』(2016)鑑賞記続き-疲れた乙女のサプリな少年マンガ!

韓国版のミュージカル『三銃士』。1階席でみたほうがいいよ、という話を無駄に熱く語ったこの作品。内容に関する感想もしたためておきたいと存じます。一言でいうと、すごく元気になれるミュージカル。嫌な出来事を忘れられるサプリのようなミュージカルでした。日々労働にいそしみ、ストレスに苦しむ人々(特にオトメ)のために、福利厚生目的で定期的に上演してほしいくらい。今回の記事は超長文です。

ワクワクするミュージカル

ミュージカル『三銃士』は乙女をうるうるさせるような胸キュンストーリーではなく、むしろ痛快活劇。ドジで熱血な主人公ダルタニャンが、事件を解決するため奮闘し、かっくいい先輩たちに認められていく成長物語だからね。かわいい女の子に一目ぼれして積極的にアタック!すぐにラブラブになってしまう簡単さがまさに「少年マンガ」的といえましょう。『ONEPIECE』の次にジャンプにのっててもおかしくない。でもこの物語のシンプルさこそが、パワーを生んでいると思うのです。

この作品の韓国版脚本・演出はワン・ヨンボムさん。音楽監督はイ・ソンジュンさん。そう、創作ミュージカル「フランケンシュタイン」のペア。そういう視点からみても、楽しめる。

チャンバラ(?)シーンもたくさんあるのですが、これまた相当カッコいい。ダンスのようにアレンジされていて、そのフォーメーションがとってもキレイなのです。また、最後に銃士隊が一列に並び、アトスを見送るシーンも、宝塚歌劇のラインダンスを見てるみたいで胸に迫ります(って、たとえの方向性が謎ですが)。わたしにも銃士隊一個小隊ください!とルイ13世にお願いしたいわ。

Dキューブからの帰り道には、「ウリヌン・ハナー」が駆け巡ること間違いなし。

(イントロ画像だけでもワクワクするー)

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『三銃士』・・なのか?

さて、韓国版をご覧になった方はご存じかと思いますが。見た瞬間、これ「三銃士」って言っていいのかね、と思わなくもない。それほどに大胆アレンジされたストーリーでした。デュマ先生作品のファン・フィク、または二次創作というべきかもしれない。少なくとも、「ダルタニャン物語」の第一部ではありません。予習に小説をよんでいっても、まったく異なる展開がまちうけていること間違いなし(アレンジの大胆さを味わうのも、それはそれでよいのですが)。

アトス・アラミス・ポルトスが三銃士な時代なのに、王妃の影薄いからね。というか、王妃いたっけ、くらいの扱いです。というか、でてきたかな?。ロシュフォールもみあたりません。そして内容は鉄仮面。原作をご存じの方ほど、時代設定が違うじゃん!とびっくりすること請け合いです。さらに鉄仮面の秘密もびっくらぽん(すでに古い?)で、ここらへん、二次創作と言いたい所以。韓国では2009年に初演されて以来、2010、2011、2013、2014年と上演を重ねる人気作品です。

 (ちなみに、原作をお手軽に確認したい場合におススメ青い鳥文庫。藤本ひとみさんが翻案されているという、かつてのコバルトファンの心にも響く1冊)

 韓国版「三銃士」あらすじ

で、韓国ミュージカル「三銃士」はどんなお話かと申しますと(以下、ネタバレ含みます)。

17世紀フランス。ルイ13世がミレディに鉄仮面をつけられ連れ去られる、そんなシーンから物語は始まります。謎めいたシーンのあと、主人公登場。田舎のガスコーニュから出てきたダルタニャンは銃士になるのが目標。お上りさんよろしくパリの街をうろうろしているうちに、ひょんなことから三銃士たちそれぞれに決闘を申し込む羽目に。そこへ怪しいものはいないか、とリシュリューの近衛兵ジュシャークとミレディがやってきます。町の人たちに陥れられ、怪しいやつ呼ばわりされるダルタニャン。それを助けてくれたのは天使のように美しいコンスタンスでした。一目ぼれするダルタニャン。簡単すぎるぞダルタニャン。コンスタンスもまんざらではない様子。簡単なヒトだねキミも、という展開。ちなみに、原作とちがってコンスタンスは人妻ではありません。

そしてコンスタンスは鉄仮面の男をダルタニャンに会わせます。仮面のせいでうまく話せない男は、ダルタニャンに金の指輪を預け、三銃士に渡してほしいと頼みます。

さて、決闘の場所時計台前、指定の時間に集う三銃士とダルタニャン。みんなと決闘するの?と言っているところにジュシャークが兵を引き連れやってくる。「決闘は禁止だ!逮捕する!」。結局三銃士とダルタニャンは決闘ではなく、むしろ力をあわせて彼らと戦うことに。戦いを終えて、おぬしなかなかやるな、と三銃士に認められるダルタニャン。みんなで酒盛りをしている途中、仮面をはずすために加治屋にでかけたコンスタンスと鉄仮面はそのまま誘拐されてしまいます。

で、この酒盛りシーンでアラミスの過去が回想されるのですが。アラミス、オペラ歌手の過去あり設定。なにそれー。聖職者になりたいんじゃないのかよ。そしてオペラ歌手時代、恋に落ちた身分の高い女性が実はミレディであり、恋心を利用されて彼女の旦那を殺すのに手を貸してしまった過去があることを明かします。えー、アラミスとミレディができてるとか、ますますなにそれー、な展開です。そして、ミレディについて語るアラミスと、やはりこれまたかつて彼女と恋愛関係にあったアトスとの間には微妙な空気が。

そんな中、コンスタンス誘拐の知らせが。ダルタニャンが持っていた指輪から、鉄仮面の男がルイ13世であると気づいた三銃士たちは、ダルタニャンとともに「うりぬん・はなー!(われらは一つ)」と王とコンスタンスを助けるべく、決起するのであった。一幕修了。

さ、トイレにいきましょう。チケット持って出るの忘れずにね。Dキューブはカフェスペースがパスプッチですよ。ジェラートも食べられますよ。

で、二幕。

一度はいると二度と出られないといわれるサント=マルグリット収容所にとらえられたコンスタンスと鉄仮面の男・ルイ13世。ダルタニャンと三銃士は、彼らを助けるための情報を求めて、ミレディたちの本拠地へ乗り込む。ここで、アトスが「自分で決着をつける」と、リシュリューとミレディーのたくらみの現場に変装して忍び込み、情報を得るのだった。再び出会うアトスとミレディー。情報を得たアトスを殺そうとするミレディ、もみ合う二人。その二人の姿は、楽しくダンスする二人のシルエットとなり、時は過去へとさかのぼり―。

で、甘々の二人のエピソードが挿入されるのですが。ミレディまさかの貴族の娘設定。伯爵令嬢ときたものだ。甘く幸せな二人の時間は、長く続かなかった。王権を脅かしたとの濡れ衣を着せられ処刑されることに。刑のを逃れようと逃亡を企てるミレディ父を見つけてしまったアトス。見逃してほしいと哀願するミレディ。しかしアトスは銃士としてそれを見逃せなかったのでした。アトスの裏切りによって、父を処刑され、体に焼き印を押され、行き場を失ったミレディは、リシュリューのもとで悪の道に進むことになった、という設定だ。もう完全オリジナルだよ!

そのころ残りの3人は収容所に向かうために船を探していた。そこでかつて海賊だった(!)ポルトスが一肌脱ぎ、海賊船を手配。もうなにがおこっても不思議はないモード全開。いいんです、少年マンガだからね。うりぬん・はなー!

収容所には、アトスと一緒にいるところを見とがめられ、リシュリューに見限られ、サン=マルグリットにほりこまれたミレディーもいました。鉄仮面とコンスタンスを助けに来た三銃士とダルタニャンは彼女を放置(ヒドイ)。自分は本当に見捨てられたのだと絶望します。

さて、王の誕生日が近づくと、リシュリューは髪を切って何やら支度をはじめます。あーらふしぎ。その姿は、王とうり二つではありませんか。実は彼は、ルイ13世の双子で、王に成り代わる日を虎視眈々とねらっていたのでした。えええっ!と驚くのも何度目でしょうか。もうなんでもいいですよ。双子ですか、そうですか。そりゃよかった。リシュリューがね。何歳設定なんだよ。

王の誕生日、王冠を受けようとするリシュリュー。そこにダルタニャンと三銃士が登場し、その王が偽物であることを暴露します。チャンバラシーンが展開。カンカンカーン。最後リシュリューとガチ対決になったダルタニャン、ドキューンと銃で撃たれます。倒れるダルタニャン。リシュリューの勝利に見えたその瞬間、謎の女性が銃を一発リシュリューに撃ちこみます。女は「ミレディーは死んだが、復讐は終わらない(だったかな)」と告げて去っていくのでした。どうやって出てきたのミレディー。

ダルタニャンはコンスタンスからもらったペンダントのおかげで一命をとりとめました。謎の女のおかげでリシュリューを無事倒すこともできた。主人公絶対死なない。ジャンプの原則ね。

そして、大団円。王を助けたということで、三銃士に栄誉が与えられ、ダルタニャンは銃士になることができましたとさ。しかし、アトスはミレディーを探す旅に出ることを決心。ダルタニャンが3人目になればいいじゃん、三銃士の、というわけ。我らの中に正義は生きている。「うりぬん・はなー!」で、幕

※ストーリーは、2016年版プログラムブックと私のあいまいな記憶を手掛かりに記述しています。記憶違いがあったらごめんなさい。

日本で上演されたミュージカル『三銃士』とは違うみたい

いやもう、あらすじを読んでいただければわかる通り、相当話違いますよね。日本でもミュージカル『三銃士』は上演されていますが日本版はオランダで制作されたミュージカルのライセンスを用いているらしい。韓国はチェコ版。チェコでの初演は2004年だそうです。

ライセンスミュージカルとはいうものの、三銃士それぞれのエピソードが付け加えられた台本で、歌詞も韓国の人たちが好きそうな感じに修正されているのだとか。さらに言えば舞台セット、振り付け、衣装も全く新しく作られており、かつてユ・ジュンサンさんやシン・ソンウさんがインタビューに答えて「内容はほぼすべて脚色による。2幕は全くの創作」とか、「音楽をつかってるだけで、ストーリーをみれば世界初演」と発言されております(Wiki三銃士・韓国語版参照)。まあ、チェコの版元はとっても自由にさせてくださった、ということですな。デュマ先生の著作権も切れてるからね、あれくらいやっても誰も怒ってこないのです。あらためて、権利うんぬんに縛られず、自由に創作するって大事!と思いました。

ちなみに、日本では「みんなは一人のために、一人はみんなのために」のセリフで有名ですが、韓国版は「うりぬん・はな~(われらは一つ~)!」を連呼しまくり。しかも三銃士のメンバーが、腰をそらして「わっはっは」と大笑いするシーンがちりばめられており(そしてそれが「芝居がかって」おり)、くらくらすること間違いなし。でもそういう部分もふくめて、ホント面白いんですよ・・これが。まさに「戯画化されてる」。

問題があるとすれば

こんな感じの、素敵なトンデモミュージカル『三銃士』。2016年版では、ダルタニャンだけで4人がキャスティング(カイ、パクヒョンシク、シヌゥ、サンドゥル)されているんですよね。三銃士メンバーも2人づつなので、どの並びで見たい かを選ぶのに一苦労。むしろ日程に限界がある場合、どのキャストをあきらめるかという苦渋の選択が待っております。もう、ミレディにこだわるのムリ だ・・。無念。

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とりあえず、どのダルタニャンからいっときますか。