韓国ミュージカル☆ライフ

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ミュージカル「スウィーニートッド」(2016・日本キャスト)観劇報告-残酷なおとぎ話のような

ミュージカル「スウィーニートッド」日本キャスト版見てまいりました。日本では1981年に初演されたこの作品。長く上演されずにいたのですが、2007年に再演が決定。今回も市村正親大竹しのぶという最強キャストを引っ提げて、4度目の上演となりました。2013年がファイナル公演とされていただけに、ファンにはうれしい公演でございます。おとぎ話のようなメイクやストーリーなのに、セットのつくりこみがリアルでロンドンの薄汚れた下町の空気が半端なく漂う、というアンバランスさ。この「不安定さ」がまさにこの作品の音楽にもマッチして、濃厚な世界が展開する舞台でした!

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(舞台の上ではみんな「誰あれ」的パンダ目メイク)

作詞・作曲 スティーヴン・ソンドハイム
脚本 ヒュー・ホィーラー
原作 クリストファー・ボンド
演出・振付 宮本亜門
スウィーニー・トッド 市村正親
ミセス・ラヴェット 大竹しのぶ
乞食女 芳本美代子
アンソニー 田代万里生
ジョアンナ 唯月ふうか
ターピン 安崎求
ビードル 斉藤暁
トバイアス 武田真治

相反し、調和する表現が絶品!

 市村正親大竹しのぶという豪華キャスト、魅力はなんといってもその演技でしょう。特に、大竹しのぶさんの演じるミセス・ラヴェットはものすごくキュートでした。ロンドンの下町の空気をきっちり身にまとったその存在感。ずるがしこくってお金も大好きなんだけど(そしてとんでもないアイデアを思い付いちゃったりもするんだけど)、どこか憎めない、むしろかわいらしく見えてしまうキャラクター。なぜこんな風に仕上がるのか。勝手に考えてみたのですが・・。そこには、相反する要素が利いてるのではないか、と。

「カエルをつぶしたような」と形容したくなる声をわざわざ出して、下町のおばさんっぷりが強調される。でも、スウィニーニー・トッドのセリフを聞いている時のおめめまん丸にしたびっくり顔や、大人気になったパイをうりさばく「悪だくみをしている」表情が絶妙で、少年・少女のような純粋さや愛くるしさがにじみ出る。動きと声を一致させ、キャラクターの感情表現を行い、それを強調していく、というのは多くの役者さんがすることなのでしょう。けれど、大竹・ラヴェットはむしろ相反する要素を組み合わせ表現するのです。これによって、むしろ深みのあるキャラクターが立ち現れる。そのテクを、その効果を、大竹・ラヴェットは見せつけてくれたのではないでしょうか。

他方、市村・トッドは一貫して復讐の鬼。過去にとらわれ、ラヴェットとどれだけ過ごしてもその怒りから抜け出せない人物を淡々と演じていく。15年といわず30年くらい島流しにあった感があります。トッドがいつまでたっても変わってくれないが故に、ラヴェットの献身がよりいっそう哀愁を帯びもするのです。ちなみに、髭剃りナイフをガッと振り上げた瞬間の鬼気迫る緊迫感がこれまた絶品。コミカルな舞台上の展開を一気にホラー・復讐劇にひきもどします。しかしあんなでっかいカミソリ、ヤバイとおもったほうがいいよ、床屋のお客さんたち。

韓国キャストへの期待も高まるよ

さて、2016年は「スウィニートッド」の当たり年(?)となっておりまして。韓国でも同作品が上演される予定。6月21日から幕が上がります(2016年10月3日まで、シャルロッテシアター、蚕室)。こちらも超豪華キャスティングでの話題作。とはいえ、市村・大竹ペアからマイナス20歳くらい?なメンバーですからね。年齢効果というものがあるとするなら、それはどんな風に舞台に影響するのか、というのを見てみたいと思います。

さらに、歌い上げ系を得意とする韓国ミュージカル界で、この不調和・不協和音が連続する音楽がどうアレンジされるのか、どう歌われるのかも気になる。というか、お客さんが満足するのか不安でもあります。

さらにさらに言えば・・。韓国の今回の公演は、ODカンパニーとA-Listの二つの会社が制作にかかわっており、公演途中でプロデューサーが変わることが予定されています。この方式が凶と出ないことを祈るばかり。ここで不協和音は不要ですので!