韓国ミュージカル☆ライフ

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ミュージカル「ビースティ」(2017年版)みてきたよ(1)-韓国のホストクラブに擬似潜入体験?

ミュージカル「ビースティ」(2017年版)見てまいりました。2017年2月24日から、5月7日まで、大学路のデミョン文化工場1館にて上演中。100分一幕もの、13歳以上観覧可。このレーティングの基準がたまに不思議になる今日この頃。「ザ・デビル」が16歳なのに、なぜこちらは13歳なのか。ほんとにそれでいいのか。ともあれ見て来たキャストはこちら!

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マダム(イ・ジェヒョン):チョン・ドンファ

エース(キム・ジュノ):ジョン・ミン

ホスト(アレックス):ペ・スンギル

ホスト(カン・ミニョク):ソン・ユテク

ホスト(イ・スンウ):キム・デヒョン

映画とは違うストーリー(ネタバレ成分高めです!)

ユン・ゲサン主演の韓国映画に「ビースティー・ボーイズ」というのがございます。清潭洞(チョンダムドンのホストクラブを舞台にした物語。ん、これのミュージカル版かな?と一瞬おもうのですが。実際、ミュージカル「ビースティ」は2014年の初演時には「ビースティー・ボーイズ」と名付けられており、より映画原作感が強かった。とはいえ、映画のタイトルとホストクラブの物語という要素をふまえているだけで、お話それ自体は異なります。2016年の再演(トライアウト)では、タイトルも「ビースティ」に変更され、より独自性を高めての2017年版。ホストクラブのバックヤード、密室的空間でおこる、5人の男たちの緊張感あふれるやり取りが魅力のミュージカルです。

物語は、と言いますと。舞台はオーナーホスト(韓国ではこれをマダムと呼ぶのでしょうか。ホストたちは彼をマダムと呼びます)イ・ジェヒョンが経営するクラブ・ギャツビー。そこで働くのは、初恋の女性を探しもとめ純愛に生きる男、エースことキム・ジュノ。病気の娘の手術費用を稼ごうとするアレックス。俳優になる夢のために一時的にホストに身をやつすミニョク。そこに父の借金を背負ってホストになることを選んだスンウがやってくる。

ジュノが探し求める女性は、実はマダムの妻。娘のため、夢のため、父の借金を返して元の生活に戻るためにホストたちが求めるのは金。クラブ・ギャツビーに集う彼らが欲するもの、それをすべて握っているのはマダムことジェヒョンなのです。それがわかっていて、彼らを絶対的な力で支配するマダム。その支配から抜け出せないホストたち。

マダムは彼らがホストをやめないようにスンウにジュノを監視させ、ミニョクをそそのかしてアレックスの夢をくじくなど、ホストたちの欲望、あるいは弱みに付け込んで彼らが変化しないように、ここにみんなでいることを選ぶように仕向けるのです。

しかし―――。ぎりぎりまで追い詰められたホストたちは、ついにマダムに対する狂気の中、お互いを傷つけあうことになるのでした――。破滅を迎える、クラブ・ギャツビー。ではなぜ、そもそも彼らはマダムの恐怖と暴力による支配を許容することになったのか。最後のシーンで、愛情と暴力の恐ろしくも悲しい両面性が指摘されるのですが。この最後のシーン。涙鼻水駄々漏れですよ!

 

さて、このストーリーをどんな関係性として描いていくのか。韓国ミュージカルらしい、妄想可能性マックスなストーリー解釈については、続きにて!

ミュージカル「ザ・デビル」(2017年版)観覧記-まばゆい光が眼を刺すよ!

なかなか見て来たミュージカルの感想が描けない今日この頃。みなさまいかがお過ごしでしょうか。すでにひと月くらい経過してしまいましたが、ミュージカル「ザ・デビル」(2017年版)見てまいりました。2017年2月14日から4月30日まで、大学路にあるドリームアートセンター1館にて上演中。今回は16歳以上観覧可となっております。インターミッション無しの110分。わかりにくい!という批評をうけての新演出。さてさて「わかりやすく」なったのか。見て来たキャストはこちら!

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(配役名が読めない・・)

Xホワイト:チョ・ヒョンギュン

Xブラック:チャン・スンジョ

ジョン・ファウスト:ソン・ヨンジン

グレッチェン:イ・イェウン

そもそものあらすじ

お話は実にシンプル。ゲーテの「ファウスト」を基に造られた台本ですが、メフィストフェレスは登場せず、Xという役柄が創作されています。なので、しょっぱなから「ファウスト」色が薄まるというかなんというか・・なストーリー。

アメリカ人証券マンのジョン・ファウストは投資家のためを思った仕事っぷりからも人柄の良さがうかがえるようなキャラとして登場します。彼には愛する恋人グレッチェン(Gretchen、日本語ではグレートヒェンと表記される)が。信じあい、愛し合う二人。しかしブラックマンデーで株価が大暴落すると、二人の関係に変化が訪れます。ジョンは大混乱に陥る市場を前に、顧客を救ってあげたい一心で苦悩します。彼を支えようとするグレッチェン。しかしファウストは現状を打破したい一心で、Xブラックの誘惑に負け、魂と引き換えにした成功を保障するという契約を飲んでしまうのです。仕事が上向いていくにつれ、当初の目的以上のものを望むようになるファウスト。そんなファウストグレッチェンは必至で止めようとします。人が変わったようになり、やがては守ろうとしていた顧客を死に追いやってしまうようにさえなるファウストグレッチェンはそんなファウストの罪をすべて背負うかのように、次第にくるっていくのでした。そしてついに、ファウストグレッチェンが信じる神(ホワイト)を選ぶのか、悪魔(ブラック)を選ぶのかを迫られ、神を信じられないファウストグレッチェンの魂を失ってしまうことになるのでした(しかし最後、グレッチェンはホワイトによって魂を救われます)。グレッチェンを失い、正気に戻る(?)ファウスト。その時悪魔は彼の魂を奪うために、彼の前にあらわれるのでした。・・・というようなお話です(ちょっと時間がたっているので、前後する部分もあるかもしれません)

まとめると、悪魔にそそのかされて破滅する、その一文以上の出来事はない!とさえいえるシンプルストーリーです。もう、ストーリー理解は必要ないんじゃないか?と思えるレベルと言えましょう。

3人劇から4人劇へ

さて、今回、2014年の初演から3年をへての再演となったわけですが。初演時にXは1人の俳優が演じる役でございました。つまりこの劇は3人劇だった。善と悪、光と闇が1人に表現されるこの劇は「ようわからん!」というつぶやきをもらしもした(らしい)。そのためなのか。再演にあたりXはホワイトとブラックに分離され、そ異なる俳優がこれを担当。4人劇となって歌のバリエーションは増え、ついでにかなり書き換えられ、韓国ミュージカルではよくあるパターン、ほとんど新作な再演となったのでございます。

で、「わかりにくさのポイントは、Xを分けることで解決できる問題ではない、ということはわかった」のでありました。そこ、ちがうから!むしろお話が薄っぺらくなるからー、と、叫びたいくらいだった。Xという存在を、どのような心で見るかによってそれは欲望にもなり、希望にもなるのだという初期のメッセージ(たぶん)を失ってまで、分ける意味はあったのか。謎でござる。3人劇のまま、できることはまだまだあるのに、とおもわされた作品でございます。

220Vの衝撃

というわけで、ややストーリー的に「うーん」とうならされた今回の「ザ・デビル」。しかし音楽は素晴らしく、OSTだけでも聞くべき、と思わされるクオリティ。ここら辺も韓国ミュージカルらしいというべきか。曲・歌唱レベルが高く「コンサートだと思えば、十分満足である」という錯覚におちいってしまう。いや、ミュージカルなんだけど。

そして今回、この舞台の目玉として面白かったのは。さして大きくないドリームアートの舞台を埋め尽くす光・光・光・・。照明デザインの方が加わったという今回の舞台は、レザービームが眼を刺す、おちおち眠気をさそわれてさえいられない光の祭典だったのです。「大学路のエレクトリカルパレードや」と、叫びたくなる光具合。日本であんなに光らせるには電圧が足りなそうなくらい、舞台上に光が渦巻いておりました。目の弱いかたは、サングラス持参でどうぞ。

小ネタ-イ・サンイさんの自主製作映像LALALANDパロディ「駱山ランド」を見てナクサン公園に行ってみよう

公開されてから日数もすぎ、すでに目にされた方も多いとは存じますが、備忘録的に記事にしておきたいと思います。「スリルミー」2016年版や、「私とナターシャと白いロバ」でも活躍、次回作「狂ったキス」(演劇)も気になるミュージカル俳優、イ・サンイさんが自主制作・出演した、ミュージカル映画「La La Land」のワンシーンの再現映像、駱山公園で撮影されたこともあり「駱山ランド」と呼ばれる映像が素敵です。

 この映像は、イ・サンイさんがいうなれば「思い付き」で制作を決めたものらしいのですが。撮影地の決定、撮影監督等への依頼。5週間程度の事前練習など総準備期間は2カ月。設営もふくめた撮影時間に8時間をかけた本気の3分弱なのです。

www.youtube.com

当初は第二展望広場が撮影予定地だったそうなのですが、再開発工事にひっかかり中止。実際の撮影場所となったのはマウルバス停車場付近(「遊び場」あたり)のようですね。

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(駱山公園地図)

4号線恵化(ヘファ)駅(大学路の駅)から歩いていくこともできますが(マロニエ公園をつっきってずーっと上った先)、結構大変なので、東大門駅(1・4号線)5番出口からマウルバス鐘路3番にのって「ナクサン終点(チョンジョム)」で下車するのがもっともはやいかもしれません。

さあみんな「LALALAND」ごっこをしよう!いや、「駱山LAND」ごっこか・・。

 

※イ・サンイさんの「 駱山LAND」制作記は「ザ・ミュージカル」サイト記事に詳しいです(記事のリンクはこちら→더뮤지컬 )。中国から取り寄せようとした衣装が未だ届いていないエピソードが笑える・・。