韓国ミュージカル☆ライフ

韓国ミュージカルを楽しみつくすブログ

ミュージカル「ハムレット・アライブ」(2017‐8年・初演)見て来たよ-ホン・グァンホかコ・ウンソンか、それが問題だ

韓国の創作ミュージカル「ハムレット・アライブ」が2017年11月23日から2018年1月28日まで芸術の殿堂トゥオル劇場にて上演中。ハムレットにはホン・グァンホとコ・ウンソンがダブルキャスト、どっちで見るかが悩ましいところです。ちなみに、「本公演は突然の銃声効果音、火薬と焦げによる煙が生じる場面があります。妊婦・心臓の弱い方は観覧時に注意してください。」との告知がございますのでご注意くださいませ。MDショップに「買うべきか、買わざるべきか、それが問題だ」と書かれているのもチェック!で、見て来たキャストはこちら。

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ハムレット:ホン・グァンホ

クローディアス:ヤン・ジュンモ

ガートルード:ムン・ヘウォン

ホレイショー:ファン・ボンシク

ヤン・ジュンモ教授のクローディアスが素敵

ホン・グァンホハムレットに歌い負けないクローディアスとしてヤン・ジュンモ教授を選択したのはただしかった!と(勝手に)満足した仕上がりでしたよ、同顔クラブリーダー(ヤン・ジュンモさんは、老け顔なミュージカル俳優さんと子どものころからこの顔だち、をスローガン(?)とするセクシー同(童)顔クラブを結成中)。兄の所有する王座と妻を奪い取る野心家ながら表面上はそれを隠そうとするクローディアスが、紳士的な演技と情熱あふれる歌声のギャップによって十全に表現されておりました。ヤン・ジュンモさんの安定感が、劇の完成度をたかめていたと思われる。

というのも。ホン・グァンホさんの歌声はやはり素晴らしいのですが、ハムレットはこれまで腐るほど多くの俳優が演じて来た役柄だけに、歌唱力プラスの演技力が試されるとなると・・。ミュージカル「シラノ」では、ん?歌の表現力に演技力もおいつきはじめたかな、という期待感があったのですが。「ハムレット・アライブ」では、歌として表現できることと(まあ、これがすごすぎるからなんですが)、演技部分で表現できることの差が大きく感じられてしまったような。それは、今回のハムレットは「アライブ」とうことで、人々(観客)と共有できるような苦悩を表現する存在と解釈され、役柄設定されており、その時点で演技の要求水準が半端なかったからかもしれません。なので、コ・ウンソン版がどうだったのかが知りたいところです。とはいえ、抜群の歌唱力で表現される歌唱パートでは、めちゃめちゃ心揺さぶられるのは間違いございません!

ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ

ちなみに、「ハムレット・アライブ」では、ローゼンクランツとギルデンスターンがなんだかやたら活躍し、彼らの最後もきっちり舞台上で描かれておりました。通常の「ハムレット」では、彼らは死んだとおまけのように付け加えられるだけの可哀想な役どころ。これを憐れんで(?)ウィリアム・S・ギルバートが「ローゼンクランツとギルデンスターン(1874)」を、トム・ストッパードが「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ(1967)」という二人劇を書いてあげた(?)ほどなのです。この二人、別に何も悪いことをしていないというのに、ハムレットに手紙を書き替えられ、イングランド王に殺されてしまうんですからね。気の毒。

で、今回この二人はいかにあつかわれるのか?を気にしておりましたところ。漫才コンビのように色違いのスーツで登場した双子のようなお調子者として描かれる二人。それなりの存在感をもつ役柄になっており、クローディアスに命じられ、ハムレットイングランド王のもとへと送りとどけるさいには、持たされた秘密の手紙(ハムレットを殺せとイングランド王に頼む手紙)を見ちゃったり、それをハムレットに書き換えられても気づかなかったり、最後にはイングランドで殺されちゃったりするシーンがきっちりかかれており、胸をなでおろしたのでありました。なんか、よかった・・。

映画「神と一緒にー罪と罰 신과함께‐죄와 벌」(韓国映画・2017‐8年)見て来たよーUSJでのアトラクション化希望!

3月にはミュージカル版「神と一緒」再演を控えた本作品。映画版を見てまいりました。2017年12月20日に封切られ、あっというまに1000万人突破。ウエブマンガ原作で映画化されるらしいという風の便りをきいてから、ずいぶんまたされたここ数年。二部作中の第一弾公開とあいなりました(第二部は2018年8月公開予定)。

韓国映画ではおなじみのメンバーが勢ぞろい。ミュージカルでもおなじみのキム・スロさんもちらっと登場しますので、劇中「キム・スロをさがせ!」を楽しむのもよし。

とはいえ、CGをこれでもかと多用した画面は、VRゲームのし過ぎでゲロはく人の話を笑えない、刺激的画面でございました。USJでアトラクションにしたらいいのでは。ある意味伝統的地獄めぐりをハイテク化する方向で、お寺の地獄めぐりを刷新するとか・・。

ともあれ、かつてミュージカル「ザ・デビル」の演出ビームにくらくら来られた方は、できるだけ後ろの方の席を予約されるほうがよかろうとおもわれます(後ろに座ってたおじさんも同様の意見をつぶやかれておりました。わかるわー)。

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一部の話によると、4DXで制作するも、ロッテシネマでは4DX上映館がなく、その規格が生きてないらしいとも。CGVの4DXでみたほうがいいみたい。

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映画では、原作マンガ(ミュージカルはこちらを踏襲)に登場するジン・ギハン弁護士は登場せず、過労死してしまったしがないサラリーマンのキム・ザボンは、消防士で「貴人」の位を与えられた魂として49日の旅をすることになる。同時並行してすすんでいた軍隊での事故をめぐるエピソードが、主人公の消防士の弟の身に降りかかったものとし、そこに家族の物語を挿入することで、より一体感のある(そして韓国映画らしい家族愛にフォーカスした)ストーリーとなっております。

また、今回ザボンの弁護人をつとめるあの世の三差史たちは、49人を転生させることができれば、自分たちも望むままに転生できるという設定になっておりました。チュ・ジフンが務める日直差史のヘ・ウォンメクは「俺は財閥2世に生まれ変わるぜ、韓国はそうでなけりゃ地獄よりひどいからな」とかなんとかいう、皮肉を込めた希望を持っていたりもして。マンガ・ミュージカル版とはことなるキャラクターを楽しめますよ。

「神と一緒」ロケ地巡りも楽しそう

さて、本編では消防士のキム・ザボンがあの世へと旅立つシーンからはじまるわけですが。そこで燃えているのが釜山にあるセンタムシティKNN社屋ビル。もう一つが鳴旨国際新都市らしい。ラストの竜巻シーンが展開する軍の駐屯施設は影島区にある旧海事高校、消防署は機場消防署、などと、釜山および周辺各地に撮影地が広がっている模様。とはいえ、バトルシーンではソウルのアイコンとなったロッテワールドタワーもちらりとうつるのは、配給会社がロッテエンターテインメントだからなのですかね。映画公開後釜山のロケ地検索状況は好調なのだそうで。日本公開後(2018年4-5月頃とのうわさ)は、ロケ地ツアーなどもおこなわれるかもしれません。

ともあれ、ミュージカル「神と一緒」と見比べる楽しみもあり。寒いソウルでの午前中の過ごし方として、映画「神と一緒」はいかがでしょうか?

ミュージカル「タイタニック(TITANIC)」(韓国版・2017‐8年)見て来たよ(1)ー舞台セットの向こうにタイタニックが見える!

ミュージカル「タイタニック」が2017年11月8日から2018年2月11日までシャーロッテシアターにて上演中でございます。一人あたり最大5役を演じる(と、プログラムブックに書かれている)本作品。存在感ある「スター」を中心に配置される大型ミュージカルが得意な韓国ミュージカル界にあって、無名の人々の生き様と、彼らが集まることで生まれる「社会」を描く群像劇のできはいかに?とおもわれましたが。マルチ・ロールとすることで、その匿名性は高まり、それぞれの役割においてタイタニックの中の社会が形成されている様子がうまく描かれておりました。コーラス部分も圧倒的な感動大作。公演期間も残りわずかとなってまいりましたが、観劇して損はございません!見て来たキャストはこちら。

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(み、見にくい・・以下、ダブルキャストの配役のみ以下)

トーマス・アンドリュース(設計者):ソ・ギョンス

フレデリック・パレット(ボイラー係):チョ・ソンユン

シンプルだけど空間を最大限に使った演出

今回の演出は初演(1997年)演出のグレン・ウォルフォードでも、2015年日本版でも演出をつとめたトム・サザーランドでもない、エリック・シェーファーによる新演出。新版での韓国初演とあいなりました。エリック・シェーファーは、本公演の制作会社ODカンパニーと、ミュージカル「スウィニートッド」でも組んだ間柄。ここにはODの野望と着実な準備が見え隠れする。

というのも、今回の演出版でODカンパニーは韓国上演権のみならず、ブロードウェイでの上演権もゲット。2018、9年にブロードウェイで上演をおこない、トニー賞でのベストリバイバル賞を狙うのだそうな。韓国ミュージカル制作会社の野望に満ちたチャレンジングな動きが背景にあるのが本作品なのです。そのため、ODの本気が見える舞台とあいなりました。

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(舞台の様子は、タイタニックのハイライト映像からも確認できます)

本作品では、舞台セットも新たに、タイタニックの「上下構造」がより明確になるよう作りこまれています。シャーロッテならではのボックス席方向に伸びた通路や、舞台中央を錯綜する通路は、時に乗船用の階段、時に船の甲板、そして時にパーティー会場の大階段となるのです。俳優さんたちがそこで演技をすることによって、観客には「む、向こうに海が見える!」と白目でうならせる効果を持つ。絶えず行き交う人々は、出演者の数以上に、タイタニックに乗り組んだ数千名の人々の息遣いをかんじさせてくれるのです。また、タイタニック沈没のシーンは、映画のようにCG使いまくりで描くわけにはいかない舞台上。設計士アンドリュースが、自らひいた図面をみて涙しつつこれから起こる残劇をかたりつくしたあと、静けさと鎮魂のシーンへとうつっていく演出は秀逸でした。パニックを実際に描くのではなく、観客の想像にゆだねることで、ラストシーンが胸に詰まる。またここにも、高さをつかった演出が生きおりました。

映画のようにメインのカップル・主人公にフォーカスした物語ではありませんが、それぞれの登場人物の息遣いが感じられる、素敵な作品でございましたよ! 

(つづく)