韓国ミュージカル☆ライフ

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韓国ミュージカル俳優パク・ヘナさんとは?―『デスノート THE MUSICAL』(日本キャスト、2020年)出演決定!

韓国の実力派ミュージカル俳優であるパク・ヘナさんが、2020年1月上演予定の『デスノート THE MUSICAL』で死神のレム役にキャスティング。韓国キャスト版でも同役柄を演じるパク・ヘナさんってどんな俳優さんなのかな?と気になっている方に、彼女の魅力を力の限り紹介したいと思います!

今回のキャスティングにあたって、韓国PLAYDBの公演ニュースによると、韓国キャストの『デスノート』を見たホリプロの制作陣と栗山演出は、レムを演じるパク・ヘナさんの実力をみとめ、ぜひ今回の日本版出演をとラブコールをおくったそうな。本公演では、日本語でレムを演じる予定なのだとか!

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デスノートTHE MUSICAL」出演者、ステージナタリーより引用

パク・ヘナ(박혜나)1982年生まれ 韓国における愛称は一説にヘナ兄貴(혜나옵)

C-JeSエンターテイメント所属 2006年「ミスターマウス」にてデビュー

夫はミュージカル俳優のキム・チャノ(김찬호)※『キング・アーサー』共演中!

では、まずはパク・ヘナさんが歌唱部分の声をあてた『アナと雪の女王(韓国語タイトル:겨울왕국)」のエルサの「Let It Go」をおききください。


다잊어 - 박혜나 (let it go) 더빙

エルサが自らを解放していくウキウキ感、その強い決意を表明していく部分にその魅力の片鱗は感じられるのですが、あくまでも「アニメーションのキャラクター」として、かわいく少女らしい範囲を大きく逸脱しないようにまとまっていると言えるかもしれません。

この、強くたくましい女の子ラインの拡張版(?)としては、ミュージカル『ウィキッド』のエルファヴァ役があるかと思います。「魔法使いと私」、「Defying Gravity」等の聴かせどころでは、原曲以上に高音部分を上げて歌いきり、その技巧におしみない賛辞が送られたのでした。


[위키드] 'Wizard and I(마법사와 나)' - '엘파바' 역 박혜나

(ミュージカル『ウィキッド』、「魔法使いと私」パク・ヘナ(エルファヴァ役))

このエルファヴァももちろん魅力的なのですが、個人的には、パク・ヘナさんの本領は、一つに大人の女の魅力、そのセクシーさと闇の部分にある!と思っておりまして。例えば、現在上演中の『キング・アーサー』ではアーサーに対立する異父姉のモーガンを妖艶に演じていらっしゃいますが、この妖しさよ!


뮤지컬 '킹아더' 프레스콜 '복수의 약속' - 박혜나, 이충주 외

(『キング・アーサープレスコールより、「復讐の約束」パク・ヘナ(モーガン役)、イ・チュンジュ(メレアガン役))

さらに、「あ、あのひと、イっちゃってるよ!」というトンデモな役どころも素晴らしく、ミュージカル『フランケンシュタイン』でエレン/エヴァ役を演じたときに、聖母のような1幕エレンから急転直下、2幕で登場するヘナ=エヴァが、怪物以上の怪演!と話題を呼びました。


[NC직캠] 뮤지컬 '프랑켄슈타인' 남자의 세계 (박혜나)

(ミュージカル『フランケンシュタイン』「男の世界」エヴァ役)

息もつかせぬ展開のミュージカル『フランケンシュタイン』において、非常に長い曲だが、基本的に状況説明的な内容であまり本編にかかわりないともいえる「男の世界」は、何十回と見るマニアの間では「休憩時間」などと呼ばれていたのですが、これをパク・ヘナ俳優は超エキセントリックに歌いこなし、マニアを「ヘナ兄貴、超サイコー」と沸かせたのでありました(個人的には姐さんと呼びたい)。

ではレムは?ということで、2017年の時のMV、リュークとレムの「哀れな人間」をどうぞ。


2017 뮤지컬 '데스노트(Death Note)' MV_'They're Only Human(불쌍한 인간)' 박혜나, 강홍석

(ミュージカル『Death Note』「哀れな人間」パク・ヘナ(レム役)、カン・ホンソク(リューク役))

はたして、日本キャスト版の『デスノート THE MUSICAL』でどんなレムを演じるのか、また新たな魅力伝説の扉が開かれる・・!

ミュージカル『最終陳述-それでも地球は回る』日本キャスト版をごらんになった皆さまへ!-GWはソウルで韓国版『最終陳述(최후진술)』を!

去る2019年2月14日~3月17日まで浅草九劇にて、韓国の創作ミュージカル『最終陳述ーそれでも地球は回る』が上演され、好評のうちに千秋楽をむかえました。この日本キャスト版をご覧になった皆様に、このGWに韓国で『最終陳述(최후진술)』を是非ご鑑賞くださいませ!とプッシュしたい。

ちなみに今回、残念ながら東京にたどり着けなかった私は、日本キャスト版を見逃してしまいました。ソウルより遠い(気がする)東京よ・・。再演の際には、是非関西でも上演いただきたいと切に願っておりまする。

musical-saisyuchinjutsu.comおそらく、この作品をご覧になった方々の脳内では、現在、「すぷれんでぃーど!ふぁんたすてぃーこー!」とか言いつつ踊るミルトンとガリレオの姿や、「俺がファンクラブ長、ナンバーワンのファン」(日本語歌詞はいくらか違っていたかもしれませんが)と迫るシェイクスピアが脳内に焼き付いて離れないはず。そんな皆様には、いまこそソウルに旅立っていただきたい。現在ソウルの大学路(テハンノ)(最寄り駅は4号線、ヘファ)にて、『最終陳述(최후진술)』が絶賛上演中なのでございます!すでに日本語でこの作品を鑑賞された方々は、きっと脳内翻訳機を用いて楽しく鑑賞できること間違いなし(たぶん)。

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2019年3月16日~6月9日、YES24 ステージ2館(旧デミョン文化工場)にて上演

以下はスペシャルカーテンコール(撮影可能なおまけカテコがあるのです)での「ナンバーワン・ファン」

www.youtube.comこちらはショーケースでの全キャストによる「それでも地球は回る」です。

www.youtube.comもう一度ガリレオや、後悔しきりのプトレマイオスや、ノリのいいGODに会いたくありませんか?もしかしたら、運命を任される客席に座ることになるかも?というわけで、観劇の決心はされましたでしょうか・・。心を決められた方々に、1点だけご注意いただきたいことがございます。日本語で予約可能な韓国のチケットサイトとして、最も有名どころなのはグローバル・インターパークなのですが。しかし!このサイトでの『最終陳述』取り扱いはございません。『最終陳述』はもう一つのチケット会社であるYES24単独販売なのでございます。ですので、YES24のグローバルサイト(表記は英語または中国語のみ)から予約する必要があります。また、YES24は昨年から外国人(外国人登録証がある人は別)の韓国語サイトID取得を制限しておりますので、海外在住の人間がアクセスできるのはこのグローバルサイト一択です。というわけで、インターパークで「最終陳述がない・・」とあきらめず、YES24を訪れてみてくださいまし。良い観劇を!

Yes24グローバルサイトでの予約はここをクリック。

※会場のYES24Stageは、旧デミョン文化工場です(ソウル市鍾路区東崇洞1‐52(서울시 종로구 동숭동 1-52))

 YES24の認証方法変更(韓国語版サイト使用不可)に関しては以下の記事を参照ください。

pokos.hatenablog.com

韓国ミュージカル『海賊(해적)』(2019、韓国、初演)見て来たよ―いざ冒険の旅路、海賊たちが航海する黄金の海原とは?

韓国の創作ミュージカル『海賊(해적)』が2019年3月10日から5月19日まで、大学路ドリームアートセンター2館にて絶賛上演中。300年前にカリブで活躍した実在の海賊たちをモチーフとする海洋冒険ロマン、とはいえ史実はほぼあってなきがごとし、息もつかせぬ2人芝居、110分一本勝負でございます。これは必ず大学路の人気演目になる。見た瞬間、これは後半チケットなくなるやつだ・・!と危険な香りをかぎとりました。しかも、ドリームアート2館は座席数も少ない。案の定、すでに千秋楽まで雪原(チケット予約されつくし、選択できる座席がない状態)が広がっております・・。しかし、あらゆる手段をつくし、なんとしてでも見てほしい本作品。見て来たキャストはこちら。

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 ルイス/アン:ペク・キボン

ジョン/メアリー:ヒョン・ソクジュン

ジェンダークロス・キャスティング

ミュージカル『海賊』で試みられたキャスティング方式、そしてキャラ造形と関係性の設定。まさにこれが本作品のユニークでチャレンジングな部分ではなかろうかと思われます。まず、キャスティングされている俳優さんはトリプルキャストなのですが、男性4人と女性2人。男×男、女×女、女×男、男×女のペアが可能なキャスト。基本は同性ペアで演じますが、混成ペアの回もある。そして物語上の登場人物のメインキャラクターは男性2人(ルイスとジョン)、女性2人(アンとメアリー)。上記のキャストボードをみていただければお分かりかと存じますが、俳優1人あたり男女各1人の主要登場人物が割り振られています。そう、かならず性別の異なる2役を演じることが告知されているのです。とはいえ、これだけでは革新的とまではいえないかもしれません。特に、大学路で演じられる少人数ミュージカルでは、1人の俳優がさまざまなキャラクターを演じることも多く、男性が女性を演じることもしばしばです(ミュージカル『グーテンバーグ!』など)。また、もともと男性俳優を当てることが多い役柄に、女性をキャスティングするというのも既にある(ミュージカル『ジーザス・クライスト』など)。もちろん、性別が特に決まっていないようなキャラクターを男女混合でキャスティングすることもあります(ミュージカル『光化門恋歌』や『ザ・デビル』など)。しかし、今回の『海賊』はその一歩先を行くことを宣言した作品と見た。

物語の設定上、俳優さんはどの回においても、自身のジェンダー(と想定される)とは異なる性別のキャラクターを演じることになるのですが。キャストが男性俳優に限定されていないことで、越境の方向性は元ペアの性別によって異なり得る。さらに、男女混成の回もありますので、男性と男性で、あるいは女性と女性で、そして男性と女性で、男性と男性の会話、女性と男性の会話、女性と女性の会話を演じていくことになるのです(書くとややこしいな!)。なので、俳優さんたちのジェンダーとキャラクターのジェンダーはいつも・つねに、どこかでズレており、そのパターンは無限大(いや、厳密には有限ですが)。

さらに恐ろしい(?)ことに、女海賊のアンとメリーは男装の麗人で凄腕のガンマンと剣士。単に女性的な魅力を表現すればよいわけではなく、むしろいかにカッコよく見せるかが命のキャラクターだったりして。冒険を書き留めるルイスは、繊細で細やかな感性の中にしなやかな強さが光るキャラクター。海賊船船長のジョンも勇猛果敢な知者とみえて、実は弱さを抱えつつそれを乗り越えようと努力する、暖かい「母性」あふれるリーダーであることがわかるのです。そう、あらかじめ、単に男らしく、女らしく男性キャラと女性キャラを演じればいいわけではない人物設定がなされている。ゆえに、妙に「らしさ」にこだわってしまうとキャラクターが死んでしまう。これはもう、俳優の力量がめちゃ問われる作品ではありませんか。

異性愛をこえてゆけ

女性が男性を、男性が女性を演じる宝塚や歌舞伎になじんだ観客であれば、女性俳優や男性俳優が異なる性別を演じることは、さして目新しく感じないよ、と思われるかたもいらっしゃるやもしれません。しかし、ミュージカル『海賊』は(たぶん)確信犯的にぶっこんできました。そうした観客の目にも新しい攪乱要素。この物語は異性愛ではなく、同性どうしの恋愛関係を描くのです。しかも、男性同士という「スリルミー」型ではなく、女海賊アンとメリーの恋愛。このお話のラブラインはこの2人の話だけ。男装の麗人たちは、お互い剣をぶつけ合い命のやり取りをする戦いの場において、その技量と勇敢さに惚れ、互いを無二の存在と認め合い、愛し始めるのです・・って、今までだったら(BL等では)それ、男性キャラクターの十八番では?という展開な、超カッコいい二人。キャラクターの性別はガッツリ女性の設定ですが、時に男性同士の俳優さんが、時に女性同士の俳優さんが、そして時に異性ペアの俳優さんがこの「女性同士の恋愛」を演じます。しかも、どのパターンで見ても、二人の最後のシーンは泣ける。

最後に見える風景は

このように、ジェンダーセクシュアリティの多様なあり方を、まさに毎回実験して見せる、ミュージカル『海賊』。女性が演じる男性の繊細さにときめいたり、あるいは男性が演じる女性の勇敢さやセクシーさにドキドキできる本作品。最後に見えてくるのは、どのような身体の下にあっても、男性性や女性性は、その時々の関係性の中で演じられていくものなのだ、という可変性なのです。型にはめられないジェンダーセクシュアリティを想像する楽しみ、それは性別がなくなることではなく、何十にも男性性や女性性が積み重ねられることで生まれる魅力なのだと「感じ」させてくれる本作品。この熱き想いを胸に我々はどうすべきか。きっと、雪原(チケットの全くない状態)にたたずみ、「再演希望ー!DVD化希望ー!」と叫ぶよりほかないのでありましょう。OST(CD)は出るとの噂ですよ。