韓国ミュージカル☆ライフ

韓国ミュージカルを楽しみつくすブログ

ミュージカル「インタビュー인터뷰」(2017年版)見て来たよ-最低2回は見たい作品。

報告が千秋楽直前となってしまいましたが、DOUBLE K.Film &Theatreがお送りする創作ミュージカル第一弾。昨年のプレビュー後、京都・東京・ニューヨークでも上演され、豪華キャストで再演された2017年版「インタビュー」。張りつめた空気の中での110分ノンストップ1幕もの3人劇、みてまいりました。本作品は2017年6月1日から8月20日まで、大学路TOM1館で上演中。今週末で千秋楽を迎えてしまいます。報告がおくれてもうしわけございません。もらったチラシには「世界が認める『大韓民国ウェル・メイド』創作ミュージカルの帰還」とありますが、ここでいうウェル・メイドはわかりやすさの意よりは、構成の妙を指すようで。大学路ミュージカルの演劇部門賞をあげたい!と思う「芝居度」の高い作品でした。見て来たキャストはこちら!

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ユジン・キム:カン・ピルソク

シングレア・ゴードン:キム・ジェボム

ジョアン・シニア:キム・ジュヨン

ピアノ:キム・スヨン

ある事件の記憶をたどる心理劇

ミュージカル「インタビュー」は、ある連続殺人事件の記憶をめぐる心理劇。とある事件をめぐる心理劇といって思い出すのは、韓国ミュージカルを代表するあの作品。「ブラック・メリー・ポピンズ」。「インタビュー」をみていると、ふと、ブラメポの記憶がよびおこされる。もちろん、まったく異なるお話なのですが、トーンや世界観、空気感(ってなんなんでしょうね)が似ているのです。おりしも劇場はTOM1館(「ブラック・メリー・ポピンズ」上演館)。この世界がお好きな方(私含む)にはたまらん作品でございます。帰りがけに韓国のお嬢さんがたも「ブラメポ思い出したよね」とつぶやいてらっしゃいました。私だけの妄想ではなかった模様。

さてここで、簡単にあらすじを説明しておきたいところですが。この作品、あらすじ説明はオールオアナッシングにしかできない。俳優さんたちのPR動画などを見ても、役どころの自己紹介すら困難な様子。そう、自分の演じている人物が誰なのか、ということ自体がトリックとして物語にくみこまれているのでございます。

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(「マット・シニア役の・・」と言った瞬間「ネタバレじゃ?」とツッコまれるコ・ウンソンさん)

本作品の物語は循環構造をなしておりまして。最初のシーンと最後のシーンは同じ。しかし観客は最初に感じた印象と、まったく異なる意味を最後のシーンに読み込むことになるのです。舞台上でユジン・キム先生がとる行動は全く同じなのに、その内面が全くことなるものとして想像できるようになる。これ、ホントに1度はあらすじを知らないまま見たほうが幸せな作品です。この落差をどれだけ感じられるかが一つポイントになっておりまして。というわけで、あらすじ回は別記事にまとめたいと思います!

3人の俳優さんの演技力対決!

さて、ちょこっとだけネタバレしますが、本作品にはさまざまな人格をもつキャラクターが登場します。そのため、基本的に会話をすすめていく男性2人の俳優さんの関係性も、場面ごとに変化していく。そしてそれが真なのか偽なのか、観客が混乱させられるところに面白さがあるのです。ですから、俳優さんたちはその場面で設定された人物・関係性こそが真実であるかのように演じなければならない。この演技にリアリティがなければ、この作品は面白くならない。今回見て来たキャストはカン・ピルソク、キム・ジェボム、キム・ジュヨン。その演技力に疑いの余地なしメンバー。キム・ジェボムさんの「子供っぽいー男前ー狂気」のふりはばを一度に堪能できたりもして、「どのジェボムさんがお好みですか?」と試されているかのようでした。

しかもですよ、このミュージカル。全組み合わせ最高なキャスティングで攻めてきているではありませんか。俳優ごと、組み合わせごとに異なる印象をあたえる鬼配役。ほかのキャスト・組み合わせも見たくなる韓国ミュージカルの王道戦略、回転ドア・ホイホイシステム(勝手に命名)導入済みなのです。MDショップ横の再観覧スタンプ列も長くなるというものでしょう。

演劇「スルース」(2017年、韓国キャスト)-チョン・ドンファ、チョン・ウクジンペア再び!

韓国ミュージカルライフと名うったこのブログではございますが、今回は演劇編とまいりましょう。2017年6月2日~7月23日までデミョン文化工場2館にて上演されました、演劇「スルース」。ミュージカル「スリルミー」10周年ロスから立ち直るべく、チョン・ドンファ、チョンウクジン、いわゆるコッ・ニュペアでみてまいりましたよ。歌わないふたりの緊張感あふれるやりとり。ただ残念なのはもうおわっちゃったよ!ということでしょうか。報告がおそくなりもうしわけございませぬ。

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アンドリュー(作家):チョン・ドンファ

マイロ(俳優):チョン・ウクジン

枯れた男と野心的な男?

さて、演劇「スルース」は二人劇。人気推理作家と彼の妻の愛人である俳優が登場人物です。作家に呼ばれた愛人は、豪華な彼の邸宅に招かれる。妻と別れろと言われるのかとおもいきや、そこで作家から提案されたのは、ダイヤを盗んだことにして、その保険金を妻の生活費として持参させるので、ひとつ泥棒を演じてくれないか?というもの。提案も提案だが、売りことばに買いことば、いつのまにか乗せられたのか乗せられたふりをしているうちに本当になってしまったのか。俳優は泥棒を演じることに。しかし演じていたはずの「泥棒」という役回り、いつのまにか作家は本気で俳優を「泥棒」として扱うようになり、ついには銃口を向けるのだった。

ーーというような、お話なのですが。

 この作品、作家として名声を獲得したが、男性としての輝きや魅力、能力を失いつつある老境の男、アンドリューが、なにも持たないが生命力と男性的魅力にあふれた俳優、マイロに嫉妬し、自らのプライドを守るためにギリギリのところで彼と知恵比べをする、という部分にポイントがあると思われるのですが。しかしですよ。フェロモン垂れ流しのチョン・ドンファさまにその役は無理だろ、とおもわずにはいられない。枯れたオッさんの哀愁は、残念ながらまだ20年は漂いそうにない。いや、20年たっても、ラテンなちょい悪オヤジ(死語)になると思われる。しかしこの作品においてそれは裏目に出てしまうのです。枯れていない「作家」というのは、「俳優」との間に、持つ・持たないの格差をつくることができないわけでして。他方、チョン・ウクジンさん演じる「俳優」マイロは、どちらかといえば好青年系で、怪しい魅力はやや封印されておりました。なぜに封印?・・。なにも持たないハングリーさに裏付けられ、すべてを掛け金とするような、張りつめた男の魅力といいましょうか。そういのとは方向性がことなっていたような。

というわけでこのペア、息はぴったりで途中のアドリブもいい感じ(ピエロの仮装をする下りでは、ムチャブリなどもあり、大爆笑)。このペアの芝居を観たいと思う観客は多いだろうと思うのですが(もちろん私もその一人)、やっぱりこの作品における、二人の緊張感と奇妙な信頼感の醸成・・という設定には、この二人の息はぴったりすぎる気がいたしました。

もうちょっと、スリルミーから間があいてたほうがよかったのかな(見てるほうも)。

ミュージカル「ロッキーホラーショー록키호러쇼 」(2017年韓国キャスト)見てきたよ-マイクル・リー様はマダムのごとし

 ミュージカル「ロッキーホラーショー록키호러쇼」が2017年5月26日から8月6日まで弘益大大学路アートセンターにて上演されました。報告が千秋楽後になってしまいました・・。観客をまきこむさまざまな仕掛けにみちた本作品。いちいち丁寧に参加してるといつのまにやら浮かれポンチになってしまう本作品。基本お祭り騒ぎののぞき見趣味、ストーリーというよりはその壊れ具合を一緒に楽しむのがミソと思われます。なので、意外に語学力をとわず楽しめたように思います。さて見て来たキャストはこちら。

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フランク・フルター博士:マイクル・リー

ジャネット:キム・ダへ

ブラッド:コ・ウンソン

マジェンタ:ソムンタク

リフラフ:キム・チャノ

高貴なるフルター博士

ミュージカル「ロッキーホラーショー」のストーリーはあってなきがごとし、よくわからないどんちゃん騒ぎがくりひろげられていくその毒々しさに魅力がある作品といえましょう。深く考えると、さまざまに時代を感じる問題要素もあり、微妙な気持ちになったりもしますので、そのあたりには立ち入らないのが正解。一応詳細を理解されたい方には、われらがWiki先生をご紹介しておきたい。ロッキー・ホラー・ショー (ミュージカル) - Wikipedia。みなさま、確認されましたでしょうか。わけわかりませんね!

さて、マイクル・リー様の博士はなんだかとても上品なマダムでございました。あるいは京都の小料理屋の女将といった風情(いったことないけど)。日本版「ロッキーホラーショー」、古田新太さんのアクの強い博士のイメージに支配された脳みそは、かえってリー様のあまりの神々しさに目潰しの刑か?とつぶやかずにはおられません。え、これってJCSだっけ?みたいな(いや、それはない)。もちろん、その衣装は珍妙にしてセクシー、にもかかわらず腕のむきむき筋肉が気になる。この不協和音が不思議の国にふさわしい風情なのです。また、カーテンコールでは「私は異星からきたから韓国語が下手なのよ」とおっしゃっていたリー様。たしかに、微妙に聞きづらい部分もありましたが、まあ、そんなに細かく聞き取らなくても、どうせ変なことしか言ってないし!という安心感もございました。

韓国のモラルコード?

ともあれ、本作品は本来クイァな要素にあふれた作品なわけですが。これを東方礼儀の国韓国でみると、どことなく最後の最後でたかがはずれきっていない気もする。ショーとしてのレベルが高いが故に、そこそこ綺麗にまとまってしまいすぎるような。他方で韓国の政治デモなどに遭遇すると、モラルを追求にかける情熱は半端ないことを実感せざるをえないのですが。が、薬、スプラッタ、食人といったインモラルさの追求は微妙なおなじ熱量ではおこなわれないのか。これはあくまでサブカルチャーカウンターカルチャー領域にとどめておくべき「たか」なのかもしれない。ミュージカル「ロッキー・ホラー・ショー」はあくまでもエンターテイメントとして作られており、わい雑さを減じ、皆が楽しめるレベルに調節されているようでした。

とはいえ、夏の暑さをぶっ飛ばす、健康的にみんなが参加できるお祭りみたいな作品という意味では、とても楽しかった!