韓国ミュージカル☆ライフ

韓国ミュージカルを楽しみつくすブログ

ミュージカル「スモーク」(2017年版)感想(1)-演劇的面白さがつまった小劇場ミュージカルの極み!

みなさまご無沙汰しております。ゴールデンウィークいかがお過ごしでしょうか。すでにソウル滞在中の方々も少なくないのでは、と推測する今日この頃でございます。ここのところ、「スリル・ミー」の話しかしていなかったような気もするので(いや、まだまだ書き足りないことはあるしかけてないペアの記録が・・たまっているのですが)、もし韓国滞在中にもう一つ観劇計画を増やそうかな?とお考えの方々がいらっしゃいましたら、強力にプッシュしたい作品がございまして。

2017年3月18日から5月28日までユニプレックス2館にて上演中のミュージカル「スモーク」が強烈に素敵なのです。このミュージカルは、大学路系でおなじみ少人数(3人)ミュージカル、110分一幕ものとなっております。二幕もの大作を続けてみるのはおなか一杯すぎる!という場合にも、組み込みやすい仕様なのです。ちなみにインターパーク単独販売ですので、ご注意を。見て来たキャストはこちら!

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チョ:キム・ジェボム

ヘ:ユン・ソホ

ホン:ユ・チュヘ

韓国近代文学史に詳しくなくても楽しめる!

インターパークの紹介欄には「天才詩人、李箱(イ・サン)の詩がミュージカルに。李箱の詩「烏瞰図 詩第15号」から出発したミュージカル「スモーク」」と記載されておりますが。「イ・サンっていわれても、第22代王・正祖(チョンジョ)しかしらないよ!」「え、イ・ソジンが王様演じてたドラマでしょ?」とおっしゃるかたも少なくありますまい。「烏瞰図 詩第15号」などと言われても、じゃあ何が1号なの的ハードルを感じます。

しかしみなさまご安心あれ。おおよその李箱の生涯をウィキペディア先生から学んでおけばなんとかなる。というか、李箱(本名キム・ヘギョン)は1930年代の京城で花開いたモダニズムを象徴するような詩人で作家。26歳で夭折、日本語でも作品を発表した人物。その作品のぶっとび加減から、発表当時は避難ごうごうで連載が中断させられた奇才系。子どものころ実家が貧乏で親戚の家に里子に出され、周囲の目をうかがいつつ母の愛情に飢えて育つ。長じては妓生のヒモとしてふらふらし、カフェを開いてはつぶしつぶししつつモダンボーイとして名をはせた。作品は批判にさらされまくり心と体を患い、朝鮮を離れ日本に流れ着き、そこでスパイ容疑をかけられて牢屋にぶち込まれた挙句、病気(結核)悪化により釈放、手記を書いて東京で亡くなった、くらいの知識で十分かと思われる。

彼のおおよその生涯は、物語の「謎」のベースにもなっているので、知っておいたほうがストーリーがわかりやすくなると思われます。というのも、ミュージカルは、李箱の生涯を順を追って描くというより彼の苦悩と心理的遍歴を一つの物語として、しかもややミステリ仕立てに再構成したものとなっているという凝ったつくり。国民的作家なので、だいたいのことはみんな知ってるよね、的扱いなのです。

しかししつこいようですが、彼の詩を一篇も知らなくても、これ以上の李箱の生涯を知らなくても、物語中にたくさん有名な詩が曲となって(台詞にもなって)引用され、紹介され、ミュージカルの世界観(と、謎の一部)を構成しているので問題ありません。さらにいえば、曲自体もかっこいいので、いっそ台詞がわかんなくても楽しめるのではと思われる(韓国ミュージカル、恐ろしい子・・)。

もちろん、劇中で引用される彼の詩は、いまだ新鮮で、なにそれ面白い、読んでみたい!とおもわされる衝撃度なので、彼の作品を予習しておいて韓国語を拾い聴きするとより音楽のカッコよさに酔えるかもしれません。

李箱作品集成

李箱作品集成

 

 (現在青空文庫が作業中。もうちょっとでもっと自由に彼の作品にふれられるようになる・・はず)

・・・あ、感想までたどり着かなかった・・。続く!

大学路観劇前グルメ(その3)-ソウル3大パン屋「ナポレオン菓子店나폴레옹 과점」のパンを大学路で「Bakery Napoleon」

大学路グルメシリーズ第三弾。劇場周辺で、かつ旅行にきたからには食べておきたいグルメ(?)を紹介するこのコーナー。その店もう知ってるよ!というお店ばかりやもしれませんが。劇場に近い、という観点からはここをおすすめせねばなりますまい。ナポレオン菓子店大学路店でございます。

※2019年4月現在閉店しております・・!

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(二階のイートインスペースがCoCo壱番屋になってしまった・・)

ドリームアートセンターや東崇アートセンターなどでの観劇計画がある場合、ここでパンを購入すると動線に無駄がありません。ちょっと時間があるときはイートイン。

韓国パンのDNA

さて、1968年創業のナポレオン菓子店나폴레옹 과점はソウル3大パン屋の1つとして名をとどろかせております。残りの二つは、江南のキムヨンモ菓子店、弘大のリッチモンド菓子店とされる(※最近弘大から城山洞に移動?)。時にナポレオン製菓店、ナポレオンパン屋などとよばれ、微妙にどれが正しいのかよくわからない・・なナポレオン菓子店。菓子店が正式らしい。製菓店だと思ってた。何となく。

キムヨンモ菓子店やリッチモンド菓子店の職人たちを育てたのは実はこのお店。そういう意味で、ソウルのパン屋は実はナポレオン帝国である、とさえいえるのです。というのも、かつてナポレオン製菓のオーナーは、店の職人たちのレベルを上げるため、フランスや日本に彼らをおしみなく(かどうかはわからないが)留学させたそうな。それは、韓国で留学それ自体が一般的でなかった1970年代から80年代のこと。パンのための留学など、さらに珍しいことだったのです。パティシエという言葉をかなり早いころから使用しはじめたが、当時の韓国の人々にはパティシエが何を意味するかとんとわからなかった、というエピソードがあるほどです。

しかも、ナポレオン製菓のオーナーは、自身がパン職人ではなかったこともあり、パンのレシピを職人たちに共有させた。一子相伝ではなく、そのノウハウを共有することを選んだパン屋。そのレシピは、いまや韓国の大手チェーンのパン屋のレシピにまで広がっているのであった。まさに韓国パンのDNAを作り上げたのが、ナポレオン菓子店なのでございます。昔は高いパン屋だ!とおもっておりましたが、ソウルの物価が爆上げされた昨今、むしろお手頃感すら感じるではございませんか。え、こんなに安かったっけ、とさえ思うお手頃感。

しかし、ですよ。レシピを共有しているにもかかわらず、店によって微妙に味が違う気がするこのお店。なぜレシピどおりつくらないのだ韓国のパン職人のたちよ!

いちばん間違いないのは本店なのですが、漢城大入口は恵化から微妙に遠い(といっても地下鉄で1駅の距離なんですが)。観劇ついで、となると心理的に遠いのです。そんな時ありがたいのが「大学路店」。一時期工事中だったため「ついになくなってしまうのか!」と恐れていたのですが、イートインスペース縮小という残念改革後、無事営業を再開してくれておりました。とりあえずよかった・・。とりあえず、そんなに劇的に味もちがわない(気がする)。

韓国ドラマ的な展開も

 さて、ここまでに紹介したナポレオン菓子店のヒストリーは、なんだか「(韓国版の)プロジェクトX」になりそうなストーリーでございました。しかしここは韓国。韓国ドラマ的展開もナポレオン菓子店には期待したい。そしてその期待にきちんと応えてくれるのがさすが「ソウル三大パン屋」の一つ(意味不明)。

かつて韓国が貧しかったころ。しかし成長を続ける経済に希望を抱く人々がたくさんいたあのころ。オーナーは職人を育て、ナポレオン菓子店を、そしてソウルのパン文化を育てた。やがて韓国の社会は成熟し、一人当たりGNPも先進国並みを達成した。オーナーは年老いた。そして・・・おこるのが「跡目相続争い(かどうかわからないが)」なのです!おおー。韓国ドラマの王道ですね。

1990年代半ばごろからナポレオン菓子店は相続人間での分家が進み、城北本店を中心とする勢力、狎鴎亭を中心とする勢力、蚕室を中心とする勢力へと分断されていきます。それぞれの勢力は異なるレシピを保有するものとみられ、同じナポレオン菓子店をなのっていても、ことなるパンが製造されている。しかも勢力を超えてポイント交換はできない冷戦体制。それを韓国のパン好きが図にしたのが以下(すごいな・・)。

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(ナムWiki나폴레옹과자점より引用)

 それぞれの勢力下で得意とするレシピが異なるので、自分がもっとも愛するケーキやパンがどの勢力によって持ち去られたのかを確かめるべきなのだそうじゃ。というわけで、大学路のナポレオン菓子店を第一歩として、広大なナポレオン帝国レシピ探しの旅に出てみるのも、また韓国グルメの楽しみ方の一つなのかもしれない。

ちなみに、大学路店ではカットケーキを頼むと飲み物が2000ウオン安くなります。アメリカンが4000ウオンなので、セットがお得!

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行き方

地下鉄4号線恵化(ヘファ)駅、1番出口を出て右にまがり、道なりに「ドリームアートセンター」を目指して進むと、左側にあります。

大学路観劇前グルメ(その2)-大学路でホットクと言えば「ホットク堂」!甘辛ニ方向から攻めていきますよ。

ミュージカル観劇旅行では、大学路とほかの劇場間を移動しつつマチネ・ソワレを楽しまれる方も少なくないと思われます。そんな時におススメなのが、韓国屋台おやつの王道ホットック。そして、大学路周辺を統べるのがこちらの「ホットク堂호떡당」!露店ホットクでは、シナモン風味の黒蜜入りが王道とはいえ、ナッツ入り、抹茶味、チーズ入りなど挟むものの多様化は進み、乱世の様相を呈しております。そんなホットク戦国武将地図において安定のおいしさを誇るこのお店のホットクは、バリエーションも豊富。夕食を食べ損ねて劇場へ向かうそのついでに、はらの虫押さえに最適の一品。緊迫のシーンでぐーぅと腹を鳴らさないためにも必須のアイテムです!

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(屋台ではなく店舗なんですが)

ホットク堂のホットクは、甘いものだけではなく、野菜入りだのトッカルビ(ハンバーグのようなもの)入りだのという御惣菜系の具がセレクトできるのが魅力。また、焼き中心パリパリ系ホットクとはことなり、ほぼ揚げ物カリカリ系の系譜に位置付けられるこのお店。腹持ちのよさは太鼓判です。

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(妊産婦と二等兵は無料らしい)

クル・ホットク(通常の密入り)1000ウオン

野菜・ホットク1500ウオン

トッカルビ・ホットク2000ウオン

ホットドック

お手製ホットドッグ1500ウオン

お手製チーズホットドッグ2000ウオン

アイスクリーム類もありまして

アイスクリームホットク2000ウオン

ソフトアイスクリーム1000ウオン

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(かじる場所によっては春雨しか見えない「野菜」味なのであった)

御惣菜系の具を選ぶと、「揚げパン」とみまごう分厚いホットクを手渡されます。皮はカリッとしつつももちもちで中の塩っぽい具との相性もバッチリ。腹の虫もしばらくはだまってくれる満足感なのです。

お店のおやすみは大学路らしく月曜日(周辺の劇場がお休みですからね)。営業は12時から24時と、まさに演劇時間にあわせてくれている。大学路芸術劇場のすぐそばのおみせ。差し入れに大量購入している人も見かけます。

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4号線ヘファ駅2番出口をでて逆方向にあるき、一つ目の角を右へ。二つ目の角を左に曲がったところ(大学路芸術劇場の手前の道)左手にお店が見えます。