韓国ミュージカル☆ライフ

韓国ミュージカルを楽しみつくすブログ

創作ミュージカル「パガニーニ(파가니니Paganini)」(2018-9、韓国、初演)見て来たよ-二幕からが見どころ満載!体力を温存しておくべし

韓国の創作ミュージカル「パガニーニ파가니니)」ソウル公演が2019年2月15日~3月31日まで世宗文化会館Mシアターにて上演中。大田芸術の殿堂とHJカルチャーが共同制作した本作品。2018年12月21日から25日まで大田芸術の殿堂にて上演され、満を持してのソウル公演とあいなりました。ミュージカル「1446」のキム・ソンミ、キム・ウンギョン作演出ペアが作り出した本作品。パガニーニ役の俳優がヴァイオリン演奏部分を本気で引きまくる!見て来たキャストはこちら。

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 パガニーニ:KoN

ルチオ・アモス:キム・ギョンス

コルレン・ボネル:ソ・スンウォン

アキッレ:ユ・スンヒョン

シャルロット・ド・ベルニエ:ハ・ヒョンジ

簡単なあらすじ

物語は、その超絶技巧から悪魔に魂を売ったと噂されたイタリアのヴァイオリニストパガニーニの死後から始まります。教会墓地への埋葬を希望するパガニーニの息子アキッレは法廷闘争を通して父の名誉回復を図ろうと試みるのですが、パガニーニを悪魔として追い続けたエクソシストの神父、ルチオはそれを阻もうとします。はたして本当にパガニーニは悪魔に魂を売ったのか?そもそも彼は一体どのような人物であったのか?ルチオが言うように、人々を堕落させる悪魔だったのか。アキッレが見たような、純粋で崇高な芸術家であったのか?その人生が紐解かれる――というようなものなのですが。

二幕からが本番、盛り上がる後半戦

1幕は状況設定とそれぞれのキャラクターの役割説明のためのシーンや台詞が多く、ざくざく出来事が説明されていきます。それぞれの役割は明確になりますが、感情移入するためのフック(内面描写)は少なめなので、どの目線で見たらいいのか定まらない。このあたりで「こ、このまま二幕も突っ走られたら、つ、つらいかも」とやや不安になるやもしれません。少なくとも私は不安でした。が、しかし!一幕で帰ってはいけませんよ。あ、帰らないですね。そうですね。――ともあれ、二幕からはいきなり「さあそれぞれのキャラの内面を描くよ」と情念モードが発動し、えらい盛り上がりが押し寄せます。そして最後、パガニーニによる「悪魔の演奏」部分では、ロック調にアレンジされた「24の奇想曲Caprice No.24」が「あれ、これザ・デビルだっけか?」とデジャヴを憶えるような光の洪水の中演奏されるのです。が、ここに至って「もう悪魔でもええやん!」とルチオに説教したくなるほどパガニーニに魅了され、熱にうかされること間違いなし。このテンションが1幕から続いたらここまで集中できなかったかもな、と妙に腑に落ちるのでございました。と同時に、1幕で見飛ばしていたエピソードが2幕において重要であったことが判明したりもして。もう一度みないとダメなやつかも・・との認識に至るかもしれません。

www.youtube.com(「24の奇想曲Caprice No.24」てどんなのだっけ?と言う人に。よく聞くアレです)

 もうひとつの見どころ(あるいは妄想)

さて、この作品にはもう一つ(?)見どころがございます。それは、悪魔祓いにすべてをささげるルチオ神父のキャラ造形。中二病ラノベに出てきそうな(いい意味で!)極端に思い込み激しいキャラ設定は、キム・ギョンスさんの無駄な色気と相まって、他のキャラ以上に2次元に寄ってます。仕事モードが白熱すると上着のボタンをはずしたりされるのですが。気を付けてください、ぼんやりしてると瞬殺されますよ。

ルチオはパガニーニの強烈な才能に触れ(たぶんそこに逃れられない快楽を感じたからこそ)その魅力を悪魔の仕業と位置づけ、パガニーニに懺悔させようと執念を燃やします。この思い込み。激しい思い込み。もうあなたのパガニーニ悪魔認定、彼への恋だから、情念だから。単なるファンだから。だれか教えたげて下さいー!と、思わずにはいられないのでありました(え、そんなこと思わない?変だなあ)。

ともあれ、見所たくさんのミュージカル「パガニーニ」なのでございます。

大学路寄り道!展覧会「英国から来たMade in 朝鮮:北朝鮮グラフィックデザイン展」見て来たよ-

「英国から来たMade in 朝鮮:北朝鮮グラフィックデザイン展」が2018年12月22日~2019年4月7日まで弘益大学大学路アートセンター(3展示室)にて開催中。イギリス人のニコラス・ボナー(Nicholas Bonner)氏が北朝鮮旅行の度に集めたはがきやポスター、小物のコレクションの写真集が発売されたのが2017年。ここに収められたコレクションを展示した展覧会「Made in 朝鮮」展がイギリスで開催されたのが2018年の春。この展覧会の巡回展が、「英国から来たMade in 朝鮮」展なのでございます。

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展覧会では、北朝鮮プロパガンダポスターだけではなく、旅行中に集められたお菓子の袋やデパートの包装紙、缶詰等食料品のパッケージデザインなど、日常生活で用いられるデザインに触れられます。展示されているのは主に90年代~2000年代の製品が中心。最後に、現在のプロダクトデザインはよりグローバルな(要するに韓国の製品と大きな違いがないようなもの)へと変貌していると説明されてもおりました。会場を訪れた女の子たちが「わあ、レトロ!」と矯正を挙げたり、ピョンヤンの1日を撮ったミニムービーに「ソウルとおんなじだよ!川がある」とはしゃぐ様子を横目に、観劇までの時間つぶしもよいのではないでしょうか。ちなみに、「もっと肉と乳を生産しよう!」みたいなポスターに、ヤギがいっぱい描かれているのが気になりました・・。

 

英語版のコレクション図録は日本のAmazonからも購入可能です。

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韓国語翻訳版が欲しい人はこちら(キョボ文庫)

www.kyobobook.co.kr

 

映画「スイングキッズ(스윙키즈)」(2018、韓国)見て来たよーミュージカル「ロギズ」とは別腹で!

韓国で2018年12月19日封切られた、EXOのディオ(ドギョンス)主演の映画「スイングキッズ」を見てまいりました。丸坊主のディオが、タップダンスで踊り狂う本作品。圧巻のダンスシーン、胸が熱くなるロギスのダンスへの想い、しかし時代は無残に彼らを悲劇へと導く。ああ無情。タップダンスの躍動感と急転直下のあのラストは・・・!是非みてください。日本でもいずれ公開されると思われる。

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1952年、写真家のワーナー・ビショフ(Werner Bischof)は朝鮮戦争下に設置された巨済島捕虜収容所の風景を撮影しておりまして。その中の1枚に、覆面をかぶり自由の女神像の前で踊る捕虜の姿がございます。この写真に霊感をえて創作されたのが、韓国の創作ミュージカル「ロギス」。

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映画「スイングキッズ」はミュージカル「ロギス」の映画版――と聞いていたのですが。タップダンスを踊る。ロギスは北出身。お兄さん大好きな仲良し兄弟。ダンスを一緒に踊る女の子との恋・・と言う要素はあるにせよ、全然オリジナルだよ!というストーリーになっておりました。

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ダンス!ダンス!タップダンス!

さて、主人公ロギスは朝鮮人民軍の捕虜ですが、「人民英雄」でもある兄がいることから、捕虜収容所でも一目置かれる存在。彼はソ連出身のダンスの先生にコサックダンスを学んだことがあり、超高速コサックダンスを踊れたりするダンス好き。彼は米軍の食糧庫に食料をくすねに入った時、たまたま目にした米兵ジャクソン(元ブロードウェイのダンサー)のタップダンスに魅了され――という、諸々「トンデモ」感あふれる本作品。しかしそれは韓国映画絶妙にツボを押さえているといいますかなんといいますか。

収容所のイメージづくりのために企画された催しで、結成されたタップダンスチーム、スイングキッズのメンバーは、女性、中共軍捕虜、芸人、黒人米軍兵と様々な社会的属性を持っています。人民軍出身のロギスを含め、政治的あるいは社会的な「よそ者」の集まりが「タップダンスへの情熱」というその1点において連帯感を持つのです。この、イデオロギーや様々な差異を超える芸能の魅力というテーマは、多国籍編成のグループを作り、彼らの音楽やダンスへの情熱が世界を駆け巡り、多くの人々の心を一つにまとめ上げていくK-POPの力をほのめかすようでもあり、ディオの魅力が爆発するしかない!という作りになっておりました。ディオのダンスとカリスマが発揮されなければ、そのメッセージに説得力はないわけですから。監督からの信頼感半端ないな!

韓国映画が得意とする、歴史的な物語の皮をかぶった「現在」の物語として、「スイングキッズ」は魅力的な映画でしたよ!