ミュージカル「美人」観覧記ー1930年代京城に韓国ロックの神が降臨!
みなさまご無沙汰しております。なかなか記事を書けずにおりますが、着実にミュージカル鑑賞はすすんでおりまして・・。というわけで、今回紹介するのは、ミュージカル「美人Miin」!弘益大大学路アートセンター大劇場にて、2018年6月15日から 7月22日まで上演中。見て来たキャストはこちら。
ガンホ:チョン・ウォニョン
ガンサン:キム・ジョング
ビョンヨン:ホ・ヘジン
ドゥチ:コン・ヨングッ
マサオ:キム・テオ
韓国ロックのゴッドファーザーの曲を植民地期舞台の物語に移植?
ミュージカル「美人」の物語は1930年代ごろ(たぶん)の京城(現、ソウル)。日本の植民地支配を受けつつも消費文化が花開く京城の、とある映画館が舞台でございます。主人公のガンホは弁士(無声映画の解説者)を務めつつ、またその歌声で人々を魅了し、その才能でオリジナルの曲を作ることに情熱を傾ける男。そして、ガンホを支えるやさしい兄のガンサンは、実は抗日運動の闘士であった・・。というような、王道日本植民地期モダンボーイモノ。この物語に関しては、もう少しひねりをきかせてほしかった・・と思わずにはいられない「京城」モノあるあるパターン。消費文化に耽溺していた主人公が、身近な人に感化され、自分たちにとっての「大事なモノ」を守るために大日本帝国に立ち向かう・・。ドラマ「京城スキャンダル」でできた枠組みを抜け出すのはなかなかに難しい、と思わされる強固な王道力。
が、このミュージカルの面白い点は、時代を表現する音楽に1960年代に「ロック」な音楽をひっさげて登場、韓国ロックの創造主となった申重鉉(シン・ジュンヒョン)の曲をこれでもか!と使用しているところにあるのです。京城にロックはおかしいだろう!とツッコみつつも、いつの間にかその音楽に乗せられてしまう。
申重鉉とは?
彼の音楽は、現在もあまたの歌手がリメイクしており、ぜんぜん古いという感じがしない。この、奇妙な新しさと、ミュージカルに設定された時代の「モダン」な表現がうまくマッチしてしまうところが、このミュージカルの良さでしょう。
申重鉉(シン・ジュンヒョン)の曲のリメイク例をあげておいましょう。たとえば、日本版がつくられたドラマ「シグナル」ですが、韓国オリジナル版の挿入歌に印象的な曲「떠나야할 그사람(ここを離れねばならない人)」があります。この曲の作詞・作曲者が申重鉉(シン・ジュンヒョン)なのです。
この歌のミュージカル内の歌唱はこちら。
ミュージカルのタイトルにもなっている「미인 (美人)」も超有名曲。
ミュージカル内では、ガンホが作曲した曲という設定で、ラジオで公開するやいなや「禁止曲」になってしまいます・・。
こうした曲たちが、京城の映画館(かつショー舞台)で歌われていきます。曲は名曲ぞろいなので、その歌だけでも心持っていかれる迫力の舞台。特に、申重鉉(シン・ジュンヒョン)とともに青春をおくったらしきおじさまおばさま方が客席には多く、ますます劇場は熱気に満ちていくのでございました。
フランケンもいいけど、「美人」もね!