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創作ミュージカル『ヴァニシング(배나싱, VANISHING)』(2018年、韓国、再演)見て来たよ-ヴァンパイヤ京城を闊歩す

今更ながらの感想ですが、韓国の創作ミュージカル「ヴァニシング(배니싱)」が2018年9月8日~11月25日まで大学路アートワンシアター1館にて上演されました。2016年3月10日~13日にトライアウト、お話を大きく変えての2017年11月4日~12月10日初演を経て、今回の再演でございました。『ジキル&ハイド』の疑似科学、『フランケンシュタイン』の生命の創造(とその終焉をめぐる男同士の関係)、『ポーの一族』のノスタルジアをまぜてつくった1920年代の京城(現ソウル)舞台のヴァンパイヤ・ストーリー(暴力的なまとめ)。見て来たキャストは(今更ながら)こちら!

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K:キム・ジョング

ウィシン:エノク

ミョンリョル:イ・ヨンギュ

非情におおざっぱなあらすじ

舞台は1920年代の京城。ウィシンは京城大医学部の学生にして天才。理事長の息子ミョンリョルはウィシンを慕いつつもその才能に嫉妬している。彼らは医学技術を磨くため、死体解剖の練習を森の中の廃屋で行おうとしておりました。その廃屋で日の光を浴びると怪我をする不思議な男Kと出会います。ウィシンは彼の血液を分析し、その体質を治療したいと考えます。Kはその熱意にうたれ、迷いつつも定期的にウィシンの研究室を訪ねるのでした。そしてついに、ウィシンはKの血液にはV因子という、驚異的な回復を助ける何かが含まれているのを発見します。と同時に、周囲で数々の失踪者が出ていることにも気づくのでした――。

(ここからネタバレしていきます)

KのV因子は吸血によって活性化する特質を持っていました。Kはヴァンパイヤ・吸血鬼だったのです。ウィシンはKが吸血によって殺人を犯していたことを責め、心を閉ざします。ウィシンを失いたくないKは、ウィシンに自らの血を与えるのでした。そう、ウィシンもヴァンパイヤになってしまうのです!吸血鬼となり果てたウィシンは、吸血の欲望と戦いながら治療薬の開発を試みます。自らの体を実験台としつつ希望をつなぐのですが、なかなか成果はあがりません。そんなウィシンのもとに、日本軍のための新薬を求めていたミョンリョルが訪ねてきます。ウィシンに協力するフリをしつつ、彼をだまし、V因子と治療薬をかすめ取ろうと狙っていたのです。ウィシンとKは、ミョンリョルに日の光を浴びせられます。Kは、ウィシンの開発したV因子を無効化する注射を打ちますが、ミョンリョルに妨害されます。ウィシンはミョンリョルから逃れるため、彼を吸血するのでした。そして、なんとか逃げ出したKとウィシン。しかしKの怪我はいつまでたっても治りません。そう、あの治療薬が効果を発揮してしまったのです。再度吸血しようとするウィシンを止め、Kは死を選択することを望むのでした。そして、ウィシンもまた、Kを見送るとともに日の光を浴び、この世から消え去ることを選びます。後には、ウィシンに吸血されたがために吸血鬼となり果てた、ミョンリョルだけが残されました。彼は治療薬を求めてウィシンの実験日誌を読むより他ありません―――で、幕。

 一瞬『ジキル&ハイド』感が訪れる

 さて、ヴァンパイヤと人間、二つのアイデンティティの間で苦しむ医者という設定は、『ジキル&ハイド』を彷彿とさせるところがあるのですが。設定だけではなく、ウィシンがヴァンパイヤになってしまった後、治療薬開発に行き詰まる中で、太陽の光の下を歩けるようになるいやもう無理だという葛藤を歌う部分で、日本版の『ジキル&ハイド』の「対決」を思い起こすライティングとワイルドホーン味を感じる音楽は、「あれ、ここから『ジキル&ハイド』になるのでは」と錯覚させられます(え、私だけ?)。また、Kの孤独や闇に閉ざされた永遠の命、それを共にする伴侶を求める切なさ・・といった、吸血鬼出すなら書くでしょそこは、というツボがきっちり抑えられております。また、Kの想いを冷たく突き放すウィシンが、最後に日の光を浴びて消え去ることを選択する下りでは、二人がその孤独を共有していたことをひしひしと感じさせられ、胸がきゅんきゅんすること間違いなし。さらに言えば、ここは俳優さんたちの解釈の見せ所なので、いかようにでもその関係性を妄想させる方向で演技できる。まるで『フランケンシュタイン』のラストのような沼感がございますよ!

大学路にてOST販売中!

2019年3月31日までスタジオ録音OSTが大学路にて販売中。どんな音楽なのかなーと興味を持たれた方は是非お手にとってみられてはいかがでしょうか。豪華5枚セット50000ウオン!平日(火~金)18時30~19時30、週末(土・日)17時~18時に、ミュージカル「キムジョンウク探し」のチケット売り場(서울시 종로구 동숭동1-144)にて購入できますよ(2019年3月現在)。詳しくはツイッターで뮤지컬 배니싱の制作会社アカウント뮤지컬 배니싱 (@vanishing_neo) | Twitterをご覧ください