ミュージカル「国境の南」(2018年・再演)見て来たよ-ソウル芸術団のクオリティが光る!

暑い日が続きますがみなさまいかがお過ごしでしょうか。ソウルに避暑に行きたい今日この頃。チケットとっちゃう?という誘惑にかられております。

さて、今回取り上げるのは、ミュージカル「国境の南」。2016年に初演された本作品、2018年6月29日から7月15日までドゥサンアートセンター・ヨンガンホールにて上演中でございます(というかもう終わる)。30%の外国人割引価格がインターパークグローバルにて設定されておりますが、パスポート確認されますのでご注意を。見て来たキャストはこちら。

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ソノ:カン・サンジュン

ヨナ:ソン・ムンソン

キョンジュ:ハ・ソンジン

パク刑事:チェ・ジョンス

ミュージカル「国境の南」とは?

韓国におけるドラマ・映画、そしてミュージカルの主題、その霊感の源泉となる歴史的事象に「植民地期」と「朝鮮戦争」の二大トラウマがあることは間違いないでしょう。さらに言えば、それをもたらしたもの、そこから引き起こされたものもまた、多くの作品となって世に問われてきましたし、たぶんこれからも多くの秀作が排出されると思われる。このミュージカル「国境の南」もまた、韓国近現代史モノの一つとして、南北の分断という現実の中で生きることを、一般の人々の目線から考えていく物語なのでございます。

本ミュージカルは2006年に制作された映画「国境の南」をベースとしておりまして。これは、朝鮮戦争を直接に扱った「ブラザーフッド」、軍隊から現代の分断国家をみた「共同警備区域JSA」などに続き、恋愛や人の情というレベルから「分断」をとらえようとしたものでございました。チャ・スンウォンが主役をつとめたこの映画、日本では「約束-Over the Border」というタイトルで公開されておりますが、「JSA」や「ブラザーフッド」レベルで受け入れられたかというと、相当「いやまあ、そんなふうにはね、ごにょごにょ」と口ごもらざるを得ない状況でございました。これは、韓国においてもそうであったようでして。

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物語の主人公は、北朝鮮の青年ソノ。マンスン台芸術団のホルン奏者。芸術団仲間で女優の恋人ヨナがいる。ある日、南で成功した祖父に呼び寄せられる形で、ソノの家族は脱北を決意する。家族を捨てることはできない彼は、北に恋人を残したまま南へと渡るのであった。脱北後、南へ彼女を呼び寄せるための金を稼ぐ日々を過ごすソノ。しかし、ヨナを脱北させることは難しく、連絡もままならない。時間だけが過ぎていき、風の便りに彼女は亡くなったと聞くことになる。絶望と諦めの中、彼は南で家族を持つことを決めた。穏やかな日々と家族の成功。彼は南で自分の居場所を築いていった。そんな穏やかな日々の中、ヨナが命がけで脱北し、南へやって来たという知らせを受けるー。というような物語。彼が取る一つ一つの選択が、日常の力学の中でやむを得ないものとして描かれていきます。これが切ない。ロマンチックな運命の恋が実らないところに、「現実の幸せ」が描かれていきます。一見「愛」がこの物語の主題に見えますが、実は「支えあう人々と生きていくこと」を日常の中で確認していくプロセスが重要なのだとメッセージしているように思えるのです。単なるメロで終わらないのは、感情を歌に乗せて存分に語れるミュージカルならではの効果なのではないでしょうか。

ソウル芸術団とは?

さて、本公演はソウル芸術団(SPAC)の創作ミュージカルとして制作されております。

www.spac.or.krソウル芸術団と言えば、ミュージカル「神と一緒」や、ミュージカル「尹東柱、月を撃つ」などでもおなじみですね。劇団は1986年に「88ソウル芸術団」として文化体育観光部(日本でいう文部科学省)傘下の国公立芸術団体として発足し、30年の伝統を持つ。年間3-4本の創作公演を行い、国際交流の場における役割も期待された組織なのです。特に、設立当初には、「南北文化交流」という「交流」がその目的にあったようですので、ミュージカル「国境の南」はまさにソウル芸術団のアイデンティティに関連する作品であるといえましょう。

創作劇と韓国的公演コンテンツにコダワリをもつソウル芸術団ならではの「北朝鮮の芸術団」演目のシーンなど、見所もたっぷりのミュージカル「国境の南」。たぶん定期的に再演されると思うので、今回見逃した人も、次回ぜひご覧になってみてください!