ミュージカル「レッド・ブック」(2017年・試演)感想(2)-女の子の「想像力の自由」に捧ぐ、素敵ミュージカル

ミュージカル「レッドブック」が2018年2月6日から3月30日まで世宗会館Mシアターにて上演中。前回1幕あらすじからかなり期間があいてしまい、すでに見に行かれた方もいらっしゃるやもしれません。ややこしいですが、この感想まじりのあらすじ後編は、2018年版ではなく2017年版の試演時の内容をもとにしております。ご注意ください。

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(このレッドブックではありません)

さて、二幕は現在韓国で吹き荒れるMeToo運動を予見したかのようなセクハラ問題と女性同士の連帯、創作の力、そしてそれを皆が理解していくユートピアを描く展開。今旬の内容!となっております。まさかこんなことになるとは、制作者たちも思ってもみなかったでしょう。さーて、どんなお話かと申しますと。

あらすじ(ネタバレ)第二幕

 有名な評論家のジョンスンがアンナの作品を評価してくれ、かつ話をしたいと言ってきた。よろこびいさんで会いに行くアンナ。しかしジョンスンはアンナがみだらな物語を書いているくらいなのだからいいだろう、と性的な行為を迫ってくるではありませんか。アンナは怒り心頭、私に欲望があることと、あなたの欲望の対象になってあげることは違うんだよ、とばかりにジョンスンの急所を一撃して逃げ出します。しかしそれを逆恨みしたジョンスンは、自らの権力を用い、市長などにレッドブックの出版差し止めを訴えるのでした。わー、セクハラおやじあるあるな展開です。

ここでローレライの主宰する会の説明が挿入されます。なぜそもそもローレライが女装しているのか、この会に集まっている女性たちはなぜ創作に駆り立てられているのか、とういうエピソード。この部分がなかなかジンとくる。現在二次創作などに励む(韓国の)(主に)女子が直面しているような何か。そしてそれを乗り越えていける、創作がもつ力が語られています。メンバーたちが、女性であることによって、また時代的な抑圧によって抱え込まされたものに押しつぶされないように。自分が自分であるために表現を選ぶのだ、という切実さに胸が熱くなること請け合いなのです。

さてさて、ローレライは女装の男性ですが、女装の趣味があるというよりは、かつて恋多きセクシーで美しい女性に恋をしたのをきっかけに、そんな女性が自由に生きられる世界を夢見て会をつくり、自らがその女性のように扮装することで自らの願いを表現しているという設定(なんじゃそら)。そして会のメンバーは、オースティンの『高慢と偏見』の続き読みたさのあまり、自ら創作を決意したもの(!)、夫の若い女との浮気に悩まされ続けた結果、夫を殺す小説を書く女、初恋の純粋さ・・ではなく燃え上がった欲望の渦を鎮めるために小説にエネルギーをぶつけるもの、そして、離婚され子どもを奪われるなか、小説に生きる希望を求めるドロシーなど、さまざま。抑圧された女性の欲望を解き放つこと。自らの欲望に忠実になること。それがこの会の存在意義であり、目的なのである!・・というわけです。

そんなローレライの会に、アンナを探してブラウンがやってきます。しかも、なぜか女装して。というのも、ローレライの会は女性のための会だから・・。そこで、自分の恋心を語ることになってしまうブラウン。アンナを理解できない、でも一緒にいたいのだ、と。そんなブラウンを、アンナもうけいれるのでした。ブラウンは自分がこだわっていた「男性」としてのふるまいやプライドを捨て、理解不可能な存在としてのアンナを尊重しつつ受け入れ、また受け入れられようとします。ちょっと理想的すぎるかもしれませんが、なかなかこのあたりの関係もステキです。

さて、セクハラ事件後の展開。レッドブックは出版法に抵触するーそんないちゃもんをつけられ、アンナとローレライの会のメンバーは捕まってしまいます。ブラウンはアンナ助けたさに、かつて心を病んでいた女性画家がその病を理由に釈放された事例があるので、アンナにも創作は病による気の迷いだったと証言するよう勧めます。ローレライの会のメンバーは、仕方なくその提案を飲むのですが、アンナは自分の創作物を貶める発言はできないと、それを拒むのでした。ブラウンは自分と一緒にいられなくなってもいいのかとアンナに迫ります。

葛藤するアンナ。そんな時、牢獄で貧しい少女と再び出会います(1幕の最初のシーンで投獄されていた時に出会った少女ふたたび)。少女はアンナの小説を読むために字を学んだと言うではないですか。ハッピーエンドの物語に希望をつなぐ少女を見て、アンナは心を決めるのでした。

ブラウンを訪ねて庭師のヘンリーがやってきます。ブラウンの祖母バイオレットとの思い出に理解を示してくれるようになった彼に満足しつつ、ブラウンがいまアンナにできることは何か、をアドバイスします。アンナを変えようと思うな。アンナの選択を見守り、それを肯定すること、それこそが大切なのだと。ーーーなかなかそんなことできる男性はいないですよ!

いよいよ、レッドブックをめぐる裁判が開かれることに。裁判の日。アンナは自らの意思で小説を書いたと言い切ります。罪に問われたとしても、自らの創作物をけがすことはできない。それがアンナの下した結論でした。――有罪が確定するかに見えたその時。ブラウンは、読者からの感想を証拠の品として提出します。それは、警察官や検察官の妻や恋人(にしたい人)、判事の母の言葉をふくむ、読者たちの声。アンナの物語によって、かつての恋心を思い出し、輝きはじめた女性たちの言葉だったのです。この声に後押されて、レッドブックは社会的悪影響を与えるとは必ずしも言えないと判断されました。アンナは無罪に。

アンナは自分の選択を後押ししてくれたブラウンとの間に強固な信頼関係が築かれたこと、彼の愛情を感じられたことを喜ぶとともに、表現することの喜びを歌い上げるのでありました・・。大団円で、幕。

 

記憶おぼろげなところを、公演後になぐりがいたメモを解読しつつの解説でありますので、前後しているところ、抜けてるところなどがあるかもしれません。すこしでも観劇の参考にしていただければと思います。

試演時には、舞台セットや衣装も簡素だったのですが、にもかかわらずその脚本の新鮮さやキャストのはまり具合に、会場(ほとんど女子!)が異常に盛り上がった記憶があります。かなりのおススメ作品です!