ミュージカル「ソピョンジェ(西便制・서편제)」(2017年版)観覧後記(2)-ソリに込められた想いに号泣準備を

みなさま、韓国創作ミュージカル「西便制(ソピョンジェ・서편제」はもう御覧になられましたでしょうか?2017年8月30日に開幕、11月5日まで、狎鴎亭BBCHシアターにて上されておりました。広い年齢層の観客が特徴のこのミュージカル、となりでおじいちゃんが号泣してても気にしないように!(ものすごく気になりますが、まあ自分も泣いてるからいいとしよう)。

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(BBCHの入口ホールでは3人のソンファお迎え。「世間は犠牲だといい、彼女は人生だと言った」・・泣けます)

心情を語る二つの音

本作品の見どころの一つは、通常のミュージカルソング(西洋音楽による旋律)に、微妙に伝統的なパンソリの節が絡んだり、あるいはどちらかの旋律がメインをはりながら各キャラクターの心情が歌われるところにあります。伝統芸能道まっしぐらのパパ、ユ・ボンがその恨(ハン)について西洋音楽で心情を歌うシーンでは、なんだか不思議な感覚が襲ってきたりもするのですが。しかし、ソンファのパートでは、主に言葉では説明しきれないような感情、慟哭や悟りのようなものは韓国的な唱として表現されます。西洋音楽的な表現を用いるパートでも、唱に近いような要素が感じられ、彼女の人生、そのすべてにソリが染みわたっているのが伝わってくる。韓国の伝統音楽を西洋音楽に乗せて説明する、という、このミュージカルのあやうい構造が、破たんせずに成り立っているのがすごいところだ!とうなってしまう。そしてそれは、俳優さんたちの圧倒的歌唱力によっているのです。

イ・ジャランの哭がささる

最初に見たソンファ、イ・ジャランさんはソウル大の国楽大学院に在籍中で、重要無形文化財5号に指定されたパンソリの歌い手として修練を積み、国楽人としてのキャリアをみとめられた存在でもあるとのこと。ソンファとして不足なしな俳優さんでした。確かに、パンソリ・パートが、まさにすすり泣くような震えを含んだ声として歌われ、また西洋的な旋律の中にも微妙にこの音が混じることによって、物語の厚みがはんぱなくなっております。

特に、父の死のシーンでは、ソンファの生命そのものをかけたような慟哭がソリとなって旋律をなし、彼女の芸がある高みに達したことを実感することになる。まさに彼女は恨(ハン)の本質をつかんでいくのですが。これが実に切ない。恨(ハン)の国ではない生まれにもかかわらず、そこで東アジア土着の魂を揺さぶられまくるといいましょうか・・。もう、となりのおじいちゃんと一緒に、鼻水たらして泣くしかないのです。このあたりからもう、号泣ポイントの連続で、酸欠になりました。ああ、この感想をもっと早くお伝えしたかった・・んですけどね。

というわけで、感想はまだ続く・・かも。