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ミュージカル「ナポレオン」観覧後記-進化する物語に注目せよ?

ミュージカル「ナポレオン」が開幕。インターパークグローバルのアオリ文句によりますと「カナダ、ロンドン・ウエストエンド、ドイツ、ニューヨーク・ブロードウェイに続き、7月に韓国でアジア初演。魅惑的で壮絶な作品が、ついにベールを脱ぐ!」大作。2017年7月13日から10月22日まで、蚕室のシャーロッテシアターにて上演中でございます。わたしが見た時点ですでにプログラムブックは売り切れ(はやっ!)次の入荷は7月28日以降となるとのことでした。もうそろそろ入荷したころでございましょうか。今回みてきたキャストはこちら。

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 ナポレオン:ハン・チサン

ジョゼフィーヌ:パク・ヘナ

タレーラン:カン・ホソク

バラス:キム・ボレ

リュシアン:ジン・テファ

簡単なあらすじ(ネタバレ?あり)

ワーテルローの戦いから物語は始まります。倒れる兵士たち。皆がナポレオンの指示をまっている。しかし彼は沈黙したまま佇むのでありました。―時は遡りコルシカ島。ナポレオンと弟のリュシアンは平等な世界を夢見ているが、平民の下級兵士であることをバカにされる日々。ナポレオンはそんな世界を変革するために、自らの戦略案をタレーランや将軍に直訴し、その軍事的才能をアピール。登用の機会をねらうのでした。その素晴らしい作戦に感動した将軍は、彼をとりたててくれました。よかったねー。

戦いで勝利し、英雄となったナポレオン(ここら辺の展開超早い)はバラス総裁主催のパーティに招かれます。彼の弟リュシアンは、貴族的な風潮に兄が従うのを批判します。しかしナポレオンは、自分たちの夢見る平等な世界の実現のためには、必要な一歩なのだと説得するのでした。またこのパーティーで、ナポレオンはバラスの寵愛をうけていたジョゼフィーヌに出会い、一目惚れ。速攻でくどくも、あの女はキケンだ、タレーランにとめられるのでした。しかしそんなことはお構いなしに、ジョゼフィーヌを口説き落とし、愛を紡ぐナポレオン。さらには、総裁の信頼を得るために、市民の暴動(ヴァンテミールの反乱)に大砲を打ち込み鎮圧に成功するのでした。この成果を評価され、ナポレオンはバラスに取り入ることに成功するのです。タレーランは出世のためなら手段を選ばない大胆なこの男に可能性を見出します。他方、リュシアンは、野望を抱くナポレオンに、自分たちの目的は平等な世界だったはずだと忠告するのでした。しかしナポレオンは彼の言葉に耳をかさず、出世街道をばく進。イタリア戦線において不可能と思われたルート、アルプス越えさえをも成功させ、ついには皇帝に即位するのでした。弟はますます彼を批判。しかし、ナポレオンは平民が皇帝にさえなれる、ということが民衆に希望をあたえるのだというのです。一幕おわり。

ニ幕。ここからさらに急展開でいまいち記憶もあいまいなのでございますが。皇帝に即位したナポレオン。跡継ぎ問題も深刻になってくる。しかし、年上妻だったジョゼフィーヌは世継ぎを産めないでいた。ジョゼフィーヌを捨てることを進めるタレーラン。さらには、ジョゼフィーヌは他の男と浮気していると吹き込むのでした。少しずつ心がすれ違うふたり。ナポレオンはついに、タレーランの勧めでオーストリア皇女マリー・ルイーズを迎え入れる。このあたりで、タレーランは、足が悪かったが故に、両親に見捨てられた子供であったことが語られるシーンもあったです。はい。さらに、ジョセフィーヌがなぜ子供を産めなくなったのか、という説明がはいります。実は一夜の過ちでできた子供をナポレオンに知られないように産み、里子に出す予定であったジョゼフィーヌ。しかしタイミングを逸してしまいます。ナポレオンに知られたくないならばと堕胎することを進めたタレーラン。しかしそのことが彼女の体を子供を産めないものにしてしまったのでした。このことが明らかになったのを契機に、ナポレオンとタレーランとの協調関係はおわります。さらにフランスとロシアとの戦争は泥沼化。ナポレオンはこの戦争にまけ、ついにはエルバ島に島流しにされるのでした。このころ、失意のジョゼフィーヌもナポレオンをおもってなくなりましたとさ。

やがて、タレーランはパリで、ナポレオンがエルバ島を脱走。ナポレオンをとらえようとした兵士たちは、共に戦ってきたナポレオンを攻撃することはできませんでした。ナポレオンは皇帝たるべき人物だった。タレーランは実感するのでした(このあたり、いまいち分かりにくい展開です)。そう、ナポレオンは、皆にとっての勝利の象徴だったのです。しかしその後、彼はワーテルローの戦いにおいて、かつてのような指揮をとることはできませんでした。彼の指示を待つ、兵士たちの言葉だけがむなしく響く中、彼のは、微動だにしません――。

というような内容でした!大まかに。

色男の金髪ナポレオン?

今回みてきたハン・チサンナポレオン。一言で言うと、ナポレオンがこんな色っぽいヒトでよいのですか!という状態でした。田舎者の小男で、無骨なところをジョゼフィーヌにバカにされていたのではなかったかのか。ミュージカルにおいては、のっけからフェロモン全開でジョゼフィーヌに迫っておりますハン・チサン選手。しかも結構初期段階で二人はラブラブになってしまう。え、心のすれ違いはどこへ。しかも髪色は金髪。なんで金髪にしたのか。元イメージから遠くなってるではございませんか。もう、従来のナポレオンイメージを崩そう戦略だったとしか思えない。

また、カン・ホソクさんのタレーランも、名門貴族の出身にして元聖職者というハイブロウさはなく、むしろナポレオン以上にギラギラした野心家として描かれている。他方、パク・ヘナさん演じるジョゼフィーヌは魅力的な妖婦というにはお上品すぎるような。とまあ、なんだかいろいろとイメージを覆されるキャラクター設定でした。これを新鮮とみるか、ストレスと感じるかが、一つこの劇評の分かれ目になりそうです。

進化するストーリー

さて、ミュージカル「ナポレオン」を見ていて、ふとよみがえる感覚が。それは、ミュージカル「エドガー・アラン・ポー」を見たときのあの感覚。特に最初の方の回を見たとき、キャラクター間の感情のつながりが読み取りづらくてもやもやしたものです。今回も、タレーランは一体何をどうしたかったの、と叫ばずにはいられなかったり。さらには、タレーランとナポレオンの関係が一方通行すぎて、ナポレオンにとってタレーランは何だったのだろう、とう疑問もわいて出た。「ポー」の際には、プレビュー公演後、大幅改造が加えられ、最後の方にみたら「え、こんな話だっけ?」というくらい雰囲気がかわっておりましたので、今回の「ナポレオン」もどんどんこれから変化していくのかもしれません。

ーー舞台なんだから、基本的なシナリオや演出はかわらないんじゃないかって?いえいえ、本作「ナポレオン」及び「エドガー・アラン・ポー」を作っているミュージカル制作会社ショーメディアグループ(SMG)は、SNSをはじめとした観客の反応をチェックしつつ、シーンを削除したり追加したりすることで有名な会社なのです。ーー10月くらいに見たら、結末がかわっていたりして。

・・・韓国ドラマか!