ミュージカル「わたしは真吾」予習!-「世界観の変換」にワクワクするためにぜひ一読を

ミュージカル「わたしは真悟」が開幕、横浜のプレビュー、浜松、富山をへて京都で公演中でございます。年明け2017年1月8日からは東京新国立劇場にお目見えとなる予定。ミュージカル好きならば是非チェックしたい俳優さんの1人、成河さんが「真悟」役(タイトルロールと言うべきか?)でキャスティングされております。エリザベート2016年キャストのDVD(ブラック)を手に入れられた方は、年末年始に成河祭り開催必至のことでしょう。

とはいえ、そもそも原作のマンガ「わたしは真悟」ってどんなお話なの?とお思いのミュージカルファンも少なくないのでは。もちろん、「ワタシの1980年代は真悟とともにあった」というディープな楳図ファンもいらっしゃるやもしれませんが。

ともあれ、ミュージカルを見に行くにあたって、できれば見に行く前に原作マンガ「わたしは真悟」を一読されることをお勧めいたしたく、この記事を書いたしだい。

 (Kindle版以外にも、文庫版など紙媒体の本もございます)

以下ネタバレなど含みます。

ところで真悟って誰?という人のために

さてこの物語、高畑充希さんと門脇麦さんが小学生の女の子、男の子の役を演じることで二人が主人公のように取り上げられますが。この物語のもう一人(?)の主人公にして物語の語り手。タイトルロールでもある「真悟」という重要な役どころがございます。この「真悟」、じつは「工業用ロボット」なのです。

ですから「わたしは真悟」ミュージカル化の知らせを耳にしたとき、そして「真悟役に成河さん」と知った時の衝撃は忘れられません。成河さん次回作人間じゃないのか!アッキーこと中川晃教さんのスヌーピー役以上の衝撃。スヌーピーは生物だもの・・。

しかもロボットはロボットでもアーム部分しかないような、工場ラインで部品の分類や組み立てを行う機械。町工場にとりいれられたロボットなのです(1980年代の作品なので、これは最新式機械という設定)。

さて物語はといいますと。新しいテクノロジーを素直に受け入れるのは子どもたち。主人公悟(さとる)は父の仕事場にやってきた「ロボット」に興味津々。工場見学の際に出会ってお互い一目ぼれした真鈴(まりん)とともに、ロボット(当初は工場の人に「モンロー」と名付けられていた)にさまざまなことを教えていきます。自分たちの名前、顔。工業用機械には必要のないデータです。

しかしやがて、そんな二人の楽しい時間はおわり、真鈴はイギリスに行くことに。引き裂かれる二人。二人はずっと一緒にいるために「結婚」して「こどもを作る」ことを決意。その方法をモンローに尋ねたところ、二人は東京タワーの頂上からとびうつることが「こどもを作る」ことにつながることを発見します。そして二人は、タワーのてっぺんから飛び降りるのでしたー。

その時生じたエネルギーは、「モンロー」が「慎吾」として、つまり悟と真鈴の子どもとして「誕生」させるほどのものでした。そう、意識をもったロボットモンローは、みずからを真鈴と悟を母、父と認識し、彼らの子ども「真悟」となのることで「うまれた」のです。

真悟は自分が何をすべきか考えます。そして、父の言葉「ボクハ イマモ キミヲ アイシテイマス」を真鈴に届けるべく、イギリスへと(機械なんだけど)旅立つのでした。ロボットアームなんですけどね!

・・・そう、この物語は「真悟」のビルドゥングスロマンだったのです。しつこいようですが、ロボットアームなんですけどね!

独特の世界観に酔いしれよう

 さて、このマンガの物語は荒唐無稽といっていいような想像力に満ち溢れておりますので、あらすじだけを読んでも「なんですかそれは?」という疑問譜がうかぶばかりやもしれません。楳図かずおというマンガ家さんの絵柄をご存じの方ならばイメージいただけると思いますが、彼の描く、誰もがなんだか怪しげなキャラクターに見える表情。昼間でも夜のよう見えるコマ内部のベタ(黒塗り)の多さ。突如あらわれる残酷描写などがいりまじりつつ、不思議なストーリーを成り立たせていく。そしてそこに描かれる物語が、荒唐無稽かつ残酷であればあるほど、それは純粋にみえてくるという逆説的な効果が生まれるのがミソ。

この楳図ワールドを構成する要素こそが、「わたしは真悟」というストーリーの「意識とは何か」「子どもと大人の境界とは何か」、「神とは?」といった抽象的な問いに、物語内でのリアリティをあたえていくのです。

この絵、この展開、つまりこのマンガでこそ表現できる楳図ワールド、真悟の世界観を、いかに「ミュージカル」というジャンルに再構築できるのか。マンガをよみきってこその楽しみがありそうです。

マンガから舞台へのメディア変換を堪能するためにも、ぜひぜひマンガを通読くださいませ。

 

楳図かずおワールドについて、さらに知りたい人には、この評論がおススメです!

楳図かずお論: マンガ表現と想像力の恐怖

楳図かずお論: マンガ表現と想像力の恐怖