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ミュージカル「See What I wanna See」(韓国キャスト・2016年版)観劇記-舞台が三角形でも大丈夫だった!

ミュージカル「See what I wanna see」(韓国キャスト・2016年版)見てまいりました。今回は弘益大大学路アートセンター小ホールという会場(2016年9月27日~11月20日)。しかも舞台が三角形という斬新度。俳優さんの尻ばっかりだったらどうしよう、という不安を胸に会場に向かいましたが(心配していたのは私だけという話も)。

結論としては心配ご無用!

ほぼ正三角形の舞台を、角度を変えつつ動きまわる絶妙な演出により、すぐ近くに俳優さんたちの呼吸を感じつつ観劇できる作品となっておりました。小劇場なのでとっても舞台と観客席が近く、また三角形の舞台を囲む形で客席があることがより一層舞台との密着度を高めておりましたよ。

この一列目の席とか、相当緊張するだろうな・・と思うくらい。むしろミュージカルの一部になってしまうような体験ができそうです。見て来たキャストはこちら!

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盛遠/夫/会計士:チェ・スヒョン

袈裟/妻/女優:ムン・ヘゥオン

警備員/神父:イ・ジュニョク

霊媒/モニカ叔母さん:チョ・ジナ

強盗/記者:チョン・サンユン

※ ちなみにプログラムブックは売り切れ(?)だったので、あやしげな記憶を頼りにしてまいります・・。

あらすじ、のようなもの(ネタバレです)

物語は、芥川龍之介原作の「袈裟と盛遠」「藪の中」「竜」という三つの物語が二部構成の舞台のベースとなっています。1部のメインは「藪の中」そして2部は「竜」。3つ目の物語「袈裟と盛遠」は、各部の冒頭に一瞬だけそのイメージが語られるという構成。この、「袈裟と盛遠」から着想を得た、男女のスリリングなやりとりが、1部冒頭では袈裟の視点から、2部では盛遠の視点から歌われ、それぞれがこの状況をどうとらえているのかを観客に理解させます。ここで示されるのは、あくまでも個人の視点からしか私たちは世界をとらえることができないというメッセージ。これはミュージカル中で繰り返し確認されるとともに、その意味を観客に解釈させようとします。そして、そのキーとなる解釈とは、嘘は共有され、真実は個人の中にのみある、というもの。

1幕の舞台はニューヨーク。セントラルパークでおきた殺人事件の証言がおこなわれる警察署の取調室。夫を殺したと主張する妻、強盗(盗人とすべき?)、そして霊媒師を通じて告白する夫が「事件の真相」を語ります。また、死体を発見した警備員が「犯人は見ていない」という目撃証言が挟まれ、原作の「藪の中」同様にそれぞれの証言は食い違い、謎は深まるという仕組み。彼ら(妻・夫・強盗)は全員「自分が犯人である」と述べる。考えてみれば、殺人事件の取り調べとしては奇妙な話なわけです。なので、なにか隠したいことがあり、彼らは「嘘」をつかなければならない状況にあると解釈できます。つまりここでは「共有できるのは嘘だけ」というメッセージが提示されているのかな、と。真実はそれぞれの登場人物の中にしかない、というわけで1幕がおわります。

そして2幕は9・11後のアメリカ社会。やはりセントラルパーク。「神」を信じられなくなった人々を目の当たりにし、自分にとっての「神」をも見失ってしまった「神父」が語り手として登場。彼は自暴自棄な気分になり「○月○日にセントラルパークの池で奇跡がおきる(だったかな・・)」という張り紙をします。それを見て、人々は大騒ぎ。筋金入りの共産主義者で神など信じたことのなかった神父の叔母さんまでがその奇跡を一目見ようとセントラルパークにやってきちゃう始末。「嘘」が共有され、人々は再び「信じる」ことを思い出し、結びつきをとりもどしさえします。そして当日のその時がやってくる。神父は青ざめ、人々にこれは自分のついた嘘に過ぎないのだと言ってまわりますが、人々は信じない。指定した時間、その時雷が鳴り響き(だったかな・・なんか、嵐がおこる)、人々はパニックに。神父が池を見ると、竜が空へと立ち上っていくのが見えました。そう、奇跡は起こったのです。神の存在を再び確信する神父。彼はその真の信仰を皆と共有しようと、竜を見ただろう、と人々に尋ねます。しかし、誰一人としてそれを見たという者はいません。そして神父は悟ります。真実は個人の中にだけしか存在しえないのだと。ーで、幕。

・・・って感じだったと思います!けっこうガッツリ考えてね!という作りでした。(なので、あらすじにわたしの解釈もまざっております)

ちなみに「袈裟と盛遠」で俳優さんたちは東洋風というべきか和風というべきか・・な、小袖と打掛なかんじの衣装(でも部分的にミニになっててセクシーに足元がみえたりして)と武士風な衣装をまとわれているのですが。シーンの最後、両俳優さんはがばりと衣装を脱ぎ捨て(一応下着はつけてる)、お互いを殺そうとするシーンで暗転。脱ぎ捨てた上着をかかえた俳優さんたちがしずしずと一列目座席の目の前を通って舞台そでに去って行かれますので、ご注意(?)くださいませ。ガン見しちゃいますよ。