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ミュージカル「ブラックメリーポピンズ」日本キャスト・2016年版見てきたよ!‐しょこたんアンナがキュート!

ミュージカル「ブラックメリーポピンズ」日本キャスト、2016年の再演版みてまいりました。今回は初演メンバー小西遼生さん、良知真次さん、上山竜治さん、一路真輝さんはそのままに、アンナ役を音月桂さんから中川翔子さんにバトンタッチしての上演です。 

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しょこたんアンナの魅力炸裂

今回、中川翔子さんは初舞台ということで、やや不安に思っていたのですが・・。心配無用!とってもキュートですてきなアンナでした。特に、子供時代のシーン(特に椅子取りゲームのシーン)では、「ジャイアン」のように皆を支配するアンナを見事に演じてらっしゃいましたよ。そして、その傍若無人ぶりがとってもかわいかった。

音月桂さんのアンナは男前というべきアンナでございました。「あ、兄貴には従うしかないっす、うっす」みたいな兄弟仁義なアンナとでももうしましょうか(どんなキャラだ)。それが中川翔子さんにチェンジすると、ガキ大将風味が増し「横暴だけど、なんか従わないといけない気がする」アンナが登場。お洋服もブルーからピンクに変更されており、妹度が多く盛り付けられていたといえましょう。

韓国版のブラック・メリーポピンズとは

この作品はもともと韓国の創作ミュージカル。心理推理スリラーという「犯人を追うのではなく、なぜそれが起こったのかを問う」ミュージカルとしてジャンルを確立したとされています。リプレイや再演の際には、どの俳優さんがそれぞれの役をすべきか、キャスティングされている俳優さんは役にはまっているかが議論されたりするほど熱心なファンを持つ作品でもあります。日本版のキャストは、かなり完成度高くはまる配役になっているのではないでしょうか!

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(韓国版のポスター「誰もこの事実を知らずにいなければならないよ・・(直訳)」)

日本版の始まりでは俳優さんたちが舞台にあらわれますが、韓国版はシルエットで浮かび上がります。メリーの登場数や役割なども少しづつことなっている。

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小西遼生さんが演じていらっしゃる長男「ハンス」のキャラクターも結構ことなっております。日本キャストでハンスは正義感の強い長男ですが、韓国版はアル中・・。それぞれの「ハンス」について、韓国キャストのお兄ちゃん、チョン・サンユンさんとの対談が公開されています(記事は以下からリンク)。

小西遼生×チョン・サンユン 舞台での共演を約束! ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』日韓“ハンス役”対談 - Astage-アステージ-

 最近韓国では再演されていないこの作品。そろそろ上演してほしいものです。

4人の兄妹のトラウマをめぐる物語

 このお話は、1920年代のドイツが舞台。3人の男の子ハンス・ヘルマン・ヨナスと1人の女の子アンナを養子にして育てていた心理学者グラチェン・シュワルツ博士の屋敷で火事が起こる。このときやけどを負いながらも子どもたちを命をかけて助けたのが家庭教師のメリー・シュミットでした。そして館には博士の死体が。誰が博士を殺したのか。子どもたちは何も覚えておらず、メアリ―はその後すぐに失踪。メアリーが犯人なのか。

月日はながれ、長男ハンスは弁護士になっていた。ある日、当時事件を担当していた刑事から、博士の手帳が送られてきます。ハンスは散り散りになっていた兄妹を呼び集め、失ったままの記憶を取り戻すことを提案する。何故なら手帳には、メアリーが家庭教師ではなく、博士の共同研究者であったことを示す実験日記が記されていたから。メアリーは何者で、自分たちはあそこで「何をされていた」のか。封印されていた記憶の小部屋が開く―――。

(以下超ネタバレ)

結局彼らが封印していた記憶とは、博士がおこなった「トラウマを消す実験」のモルモットであったという過去。それに気づき、博士を殺してしまったという事実。そして、アンナは実験の過程で、性的な暴力を受けており、それをどうしようもなく見ているしかなかった兄弟たちの苦しみでした。

メアリーは催眠療法で彼らのトラウマを消去する実験を継続するうちに、博士の実験に疑問をいだきはじめていました。さらに、実はそれが人間を兵器化するための実験の一部であることを知り、屋敷から逃げ出します。が、思いとどまって兄妹を助けにもどるのですが、時すでに遅し。彼らは博士を殺害した後でした。実験台にされていたという事実を含め、記憶を消す催眠をかけてくれと頼む兄妹たち。メリーは彼らの心と体を救うため屋敷に火を放ち、彼らに催眠をかけるとともに炎の中から助け出し、そして彼らの記憶を固く封印するため、失踪したのでした。

全ての記憶を取り戻した兄妹。再度この苦しみを取り除いてほしいかとメリーに問われます。彼らの出した答えは、ノー。メリーとともに、苦しみを抱えて生きていくことを選択し、彼らは記憶の小部屋を解体する――で、幕。

マンガ「MONSTER」か?という意見も

 さて、これが韓国で上演された時、浦沢直樹さんのマンガ「MONSTER」か!という意見が見られました。幼少期の実験によるトラウマとか殺人、火事、ドイツ、童話といったキーワードがそういう印象を生むのでしょうか。時代設定も異なるっちゃ異なるんですが。

MONSTER 完全版(ビッグコミックススペシャル) 全9巻セット

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 「ドイツ・トラウマフェア」と称して、マンガを読んでみるのもいいかもしれません(どんな祭りだ・・)。

ミュージカル「ブラックメリーポピンズ」の日本版は、セリフの合間にノイズがあえて入れられたり、不安定な動きが強調される演出が取り入れられたりもして、心理的な問題へ観客を集中させていく手法が秀逸です。また、メリーを一路真輝さんが演じておられることもあり、メリーが兄妹の「母」として彼らをすくう、という印象が強調されます。メリーに存在感がめちゃめちゃある。そのため、この作品が、母性によりトラウマは克服されうるというメッセ―ジを含んでいるようにも見えます。しかし最後のシーンはより深い「催眠」への導入なのだという解釈もあるようで。そのあたりをもやもや考えるのも、この作品ならではの楽しみ方なのだと思います。