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ミュージカル「Newsies ニュージーズ뉴시즈」予習-ミュージカル映画「The News Boys」を見てみた

 2016年、アジア初で韓国初演となるディズニー・ミュージカル「ニュージーズNewsies 」(韓国語表記は뉴시즈なのでニューシズですね)が4月12日に初日を迎え、7月3日まで忠武アートホールで上演中でございます。開幕後あまりに早く行き過ぎるとプログラムブック等がそろっていないことも多い韓国のミュージカル。折り返し地点に近づきつつある今日この頃、そろそろ準備万端、もろもろ整ってきたのではないでしょうか。公演評もちらほら目にします。見に行くべき「時が来た」、かな。ということで、予習をはじめることにしました。

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(熱気あふれるポスター。世の中をストップさせる奴らが来た!とある。ストの話ですからね)

ディズニー・ミュージカル「ニュージーズ」とは

韓国初演となる本作品「ニュージーズ」は、1992年に造られた、ウオルト・ディズニー・ピクチャーズ制作のミュージカル映画が原作(?)。物語は1899年の夏、実際におこった新聞少年たちによるストライキに着想を得ています。

ミュージカルは2011年にアメリカはニュージャージー州ミルバーンで初演。映画版の曲に新曲を加える形で作品が作られました。このとき、登場人物の人員整理・設定のドラマチック化がおこなわれ、ついでにいくつかの曲が消滅した模様。この興業は好評を得たようで、翌年からブロードウェイで上演されるようになります。

このミュージカルは売れる!と見込んだディズニーは、とった行動も早かった。開幕後、公演日はどんどん延長されて千秋楽を迎えるまでに1005公演が打たれたのだとか。その後、ロンドンウエスト・エンド公演(2014年)、全米ツアー(2014年)が実施されております。このようにみてみると、韓国版「ニュージーズ」は、英語圏外初上演でもあるわけで。韓国語の語感が作品イメージにどのような印象を与えるかも興味深いところでしょう。

映画は興業的にはさんざんだった(らしい)

さて、今回予習と称してみたのは舞台の元ネタミュージカル映画です。アラン・メンケン作曲なのは舞台版同様。ただし、この映画自体は興行的に失敗だったようで、製作費すら取り戻せなかった、ディズニー痛恨の一作。むしろ、ウオルト・ディズニー・スタジオ最低記録の興行収入をたたき出したらしい。

しかし、世の中には「最低」を突き詰めると、「最低」であることを愛する人が登場するものでありまして。この作品は映画としては失敗したのですが、ビデオ、DVDになってからじ わじわと人気を集め、マニアックな評価をあたえられることになったそうな。しかし、ゴールデンラズベリー賞(最低の映画にあたえられる賞。アカデミー賞の前夜に発表される)をとるには至らなかったようですね。最低を極めるならここまでいっていただきたかった。なにごとも極まで到達し、突き抜けるのは難しいということでござい ましょうか。

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意外に硬派な骨組

で、映画の物語はといいますと。安く働かされているNYの新聞売りの少年たちが立ち上がり、同様の低賃金労働を強いられる子どもたちと連帯、ストライキを決行して自分たちの権利を勝ち取る、というもの。資本主義社会の現実と、労働者たちが自らの権利をもとめて戦う運動を主題とした「硬派」な物語がその根幹にはある。しかしその骨格は、いつのまいやら、歌あり踊りありラブラインありの夢見る少年たちの友情の物語に「びびでばびでぶー」と超訳されてしまいます。

時は19世紀末ニューヨーク。17歳の少年主人公、孤児のジャック(クリスチャン・ベール)には夢があった。新聞売り(ニュージーズ)でお金を貯め、サンタフェに行くこと。ある日、家計を助けるべく新聞売りを始めたデイヴィットとその弟レスとであう。ともに新聞を売り友情をはぐくむ二人(と弟)。ここら辺いろいろあるけど省略。ジャックはデイヴィットの姉(妹?)とも恋に落ちたりして忙しい日々をおくっていた。

そんな中、新聞業界はより一層の利益を求め、新聞卸値の値上げを画策。新聞売りの少年たちはこの新聞を買い取り販売しつつ利益をえていたのだが、彼らの利を奪おうという魂胆であったのだ。新聞を値上げするのでなく、役員報酬をけずるのでもなく、弱者からより多くを奪おうとする経営者たち。純粋な子ども対わるいおっさんたちのわかりやすい構図です。悪いおじさんたちの親玉は、ピューリツァー賞で有名なピューリツァーさんだったりもして。

さて、ジャックは経営者たちのこの汚いやり方に反発。俺たちが売らなければ新聞は流通しない。ニュージーズが結束してストライキを実行し、値上げをやめさせるんだ!と息巻く。でもジャックはあんまりおつむがよろしくない設定。すぐに暴力にうったえちゃったり、調子に乗ってみんなを扇動しちゃったりする。そんなジャックをなだめつつ、リーダーに育てていくのは親友のデイヴィット。ジャックとデイヴィッドは戦略を立て、ほかの地区のリーダーとも交渉し、協力を取り付けていくのだった。

この過程で、踊りまくり。え、そこでも踊るのですかと言わんばかりに、レッツダンス。歌はアンサンブルとともに、これまたにぎやか。やっぱりアメリカのミュージカルは踊ってナンボなんだなーと実感するのでございます。

さて踊っているうちに、ジャックたちに協力してくれる「よい大人」登場。それはサン誌の記者デントン(男)。従軍記者だった彼は、とっても社会派。少年たちの運動に興味をもち、記事を書いて運動を支援しようとしてくれる。でも記者とはしがないサラリーマンの別名でもあった。サン誌の経営陣はニュージーズの主張を握りつぶそうとし、デントンの記事も葬り去られてしまう。ふたたび戦場行を命じられてしまうデントン。行き詰る少年たちのストライキ。経営陣はさらに、ジャックを抱き込み、かれのニュージーズたちへの想い、友情を利用してスト破りを行おうとする。ジャックはみんなのために、自分の夢をすててその要求を一時、のむのですがーー。

びっくりディズニー的メルヘンな結末

で、ここら辺からがディズニー指数が赤丸急上昇していきます。ジャックを陣営に引き込み、勝利を確信した大人たち(の、下っ端のほう)が、調子にのってデイヴィッドとその兄妹たちに乱暴をはたらいちゃったりして、これまたよくある展開。それを見たジャック。俺は何のために我慢してたんだ!ゆるせん!うりゃー!(とは言わないよ)とばかりにその場に飛び込み、デイヴィッド兄妹を助けるのでした。このままでは何も解決しない。そう思ったジャックとその仲間たち。戦地に再び旅立つ準備をしていたデントンのところへ相談に。そして、今起こっている問題は、自分たちニュージーズだけの問題ではなく、この街で働く子どもたちみんなの問題であることに思い至るのです。みんなを団結させよう。うりぬん・はなー(あれ、違う作品が。ええ、そんなことは言ってませんでした。でも似たようなことを・・)。

みんなを団結させる手段として、新聞を作る決意をするジャックたち。ビューリツァーの会社の地下に眠る古い印刷機を利用して、働く子どもたちが不当に扱われていることを告発する記事を刷り、新聞を作り、ニュージーズたちの手で配布することに。そして、その新聞を手にした子どもたちが、ついに立ち上がる!どしどしストに集まる子どもたち。彼らの歓声を背に、ジャックはビューリツァーとの交渉に臨む。

さ・ら・に、ここからいよいよなし崩しなんですが。

ジャックや子どもたちの集会がもつ力に脅威を感じつつも、譲らないピューリツァー。そこへ突如、ジャック達が発行した新聞をみてストのことを知ったルーズベルト(のちの大統領)が押しかける。彼は子どもたちのために立ち上がったのだ。有力者の参戦であっという間にいろいろ解決。反抗する少年たちを送り込み虐待していた少年院も摘発。よかったよかったの急展開で大団円。

ルーズベルトはジャックになにか希望はあるかと尋ねる。ジャックはサンタフェに行きたいという。しかし、最終的に彼が向かったのは、いつもニュージーズたちがたむろする、新聞卸の窓口前だった。喜ぶ仲間たち。そこにいたデイビッド姉とぶっちゅーとキッス。仲間たちともども大盛り上がり。うりぬん・はなー(ちがうって)。

以上。

えー、ルーズベルト・オチ?

もしかしたら、すごく批判的な映画なのかも?

このようにストーリーをまとめてみると実感するのですが、結局子どもたちでは何も解決できなかった・・・というお話なわけで。終盤急展開のルーズベルト、オチ効果が実に、実に大きくマイナス方向にはたらいております。結局権力者の介入によって解決しただけじゃん、という感想を抱いてしまう。

メルヘンであるなら徹底して、ジャックたちが新聞を作り、弱者を団結させて、みんなの力を集めることで勝利を手にできたよ、としてほしかった。みんなであんなに歌ったり踊ったり一生懸命したのに(?)、そのパワーは、結局大人たちのルールをかえる決定打にはなりえなかったのだなあ、と諸行無常感が漂います。

まあ、このディズニー的メルヘンオチは、逆に若さのパワーがあったとしても、「子どもたちはしょせん、権力の前に無力である」というものすごくリアルな事実を描いているのだととらえるなら。それはそれで、ものすごく皮肉の利いた作品であると見ることもできるのですが。

ちなみに、ジャックよりブルックリンを掌握するスポットというニュージーズ少年のほうが、キャラたってます。かっくいいぜ。