韓国ミュージカル☆ライフ

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「スリル・ミー」2016年韓国版感想-その美しさは指にあり!

韓国版「スリル・ミー」2016年版、観客についての感想ばかりを書いて間が空いてしまいました。本編、中身の感想ものべておきたい。ゴールデンウィーク期間中に大学路方面に出かけられる予定がおありならば、是非見ていただきたい作品です。「ヘドウィグ」を上演中の弘益大学アートセンターとそう離れておりません。会場は、デミョン文化工場です。入口がなんかわかりにくいよねデミョン文化工場。雨が降ると階段が怖いよデミョン文化工場・・。

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とりあえず今回の感想はこのペア。イ・サンイ「私」、カン・ドンホ「彼」です。

カン・ドンホさんは除隊後初作品としてこの作品を選択。以前出演した際に演技するのに一生懸命すぎてそれが「彼」役の余裕あるイメージにあわなかったのでは、というやり残し感があったそうで。それを克服するために今回出演をきめた、という話をインタビューで答えておられました。そのかいあってか(?)、なんかスかした(失礼)「彼」でしたよ(いや、いい意味で・・)。

他方イ・サンイさんは、今回初「スリル・ミー」。いいところの子なんだろうけど、すごいお金持ちのボンボンというより、両親が地方公務員とか学校の先生なおうちの優等生でちょっとオタク、みたいな「私」でした(失礼すぎ)。歌が抜群にうまいので、吸い込まれます。きっと「彼」もこの声の魔力で操られたに違いない、と思わせてくれました。

基本楽しく満足した観劇だったのですが。「スリル・ミー」はやっぱり、見るだけではなく、ペアの関係性を(勝手に)読み込むことにも、楽しさがあるのではないかと思うのです。というわけで、勝手にこのペアを評価してみましょう。ええ、勝手にねー。

 個人演技がまさったかな?

今回のペア、どちらの俳優さんもそれぞれ魅力的に「私」と「彼」を演じているのですが、組み合わせとしてみたときにどうかなー?と思わなくもなかった。

イ・サンイさんの「私」はすごく普通の青年(真面目公務員風)なのですが、実は自分を必要としている「彼」を利用しつつ自分の欲望を最大限に満たそうとしているコワイタイプに見えた。しかも、自分の思う通りぞくぞくさせ、快楽をあたえてくれればリチャードじゃなくてもいいんじゃない?という気さえしてくる。けっこう冷たいネイスンに思えました。

で、カン・ドンホさんのリチャードは、父に対するコンプレックスでいっぱいで、それをひたかくしにして威勢を貼ってるけど、その危うさが見え見え、みたいなキャラ。幼児誘拐のシーンは「彼」キャラが持つ不安定さがモロあらわれて見ごたえあり。彼が殺したかったのは、父が大事にする「弟」であるだけでなく、愛されない「自分」なのかな、と思わせるトラウマ噴出シーン。だからこそ、ネイスンにつけ入れられやすそうなリチャードにも見えたんですが。また、各所で、「私」を必要としている感みえみえに演じてらっしゃった気がする。自分を肯定してくれる存在に依存している「彼」なのです。

それぞれのキャラクターはとてもよくできてたと思うし、見ごたえがありました。二人の歌もとってもうまくまとまっててよかった。でも、一見フツー男子で実は狂気潜在系「私」には、不安定中二病「彼」はあわないのかもしれないなー、とも思いましたよ。この二人だったら、途中ネイスンがリチャードを見切って、ほかの男に乗り換えちゃうんじゃない?という気がしてしまうのです。

たぶん、カン・ドンホリチャードの場合、「彼」みたなお子ちゃまをほっておけない、母性と狂気を含んだ粘着系、自己陶酔系の「私」があってるんじゃなかろうか。イ・サンイさんの「私」はあるいみカラッとして見えるのに、ふたを開けたらあら、この人こんなヤバイ人だったの系。なので 同じようなタイプの「彼」のほうが、双方の狂気度が上がるのではないか、と。似た者同士であるからこそ唯一の存在になる、みたいな展開。あくまで個人的な意見ですが。ともあれ、とっても楽しい90分だったのは間違いない。そして、今でも反芻して楽しめるとは、一粒で何度おいしいんだ!

「腐」目線の定点観測

で、なにげに気になったのですが「Thrill me」を歌い終わった瞬間「私」がいかに思いを遂げるかというシーンの演出の変遷。過去の映像を探してみました。

まず、2009年版ではけっこうワイルドに迫ってますね。5分50秒くらい、最後の部分をご覧ください。ガバっとシャツ破いちゃうよ系。

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(2009スリルミー・Written Contract、Thrill Meジョン・サンユン、キム・ウヒョン)

そして、2013年。プレスコールで披露された「Thrill me」。ラスト4分45秒を見ていただきたい。ここでは、シャツビリビリ時代は去り「私」が「彼」に迫って押し倒すバタンキュー時代へと変貌を遂げております。一層「ワイルドだぜ~(古い)」。この年、韓国でも栗山民也さんが演出にはいったことが影響しているのでしょうか。

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(2013年スリルミー第二次プレスコール3、パク・ヨンス、イム・ビョングン)

このまま過激化、ふたたび18禁時代が到来するのか? と、おもわれた2014-15年版。逆にマイルド化が進行いたしました。これも最後の部分をご覧ください。サスペンダーを外してベンチに座らせ、首筋キッスで暗転です。

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(2014年スリルミープレスコールTThrill Me(パク・ヨンフンフォーカス))

となると、今回はどうするのであろうか?というのが一つの関心事でございました。結論から申しますと、バタンキューは、なし。首筋キッスで暗転路線維持。このように、マイルド演出の延長だったのですが、変更点は、ベンチにグイッと座らせる、首筋キッスしかけるーの、暗転直後一瞬「彼」にスポットがあたるようになりました。つまり、「私」に迫られて同意した「彼」の真意がのぞくパートとして、その表情を読み取らせようという演出(だと思う)。ここで「彼」は嫌そうなのか、結構まんざらでもないのか。解釈のための情報を大盤振る舞いしてくださいますよ!

ちなみに、カン・ドンホの「彼」は、嫌そうなふりをしつつまんざらでもないように見えた(妄想か?)気がする・・。

もう一点付け加えておきたいのは

このペア、とくに「彼」のカン・ドンホさんの魅力として「指の長さ」というのが生きてたなーと思いました。「私」を後ろから抱きしめながら、あるいはその肩に回された腕の先に見える指。これがまた、絶品。

このミュージカルでは、マッチすったり、たばこ吸ったりして「指先に注目させる」というシーンが結構多い気がするのですが。その時、指がどんな形状であるかは結構重要な要素なのではなかろうか。いや、重要です。きっと。

ちなみに、イ・サンイさんは結構がっしりしたおてです。むしろ、サンイさんの見どころ(?)は、仮釈放委員会にかけられて、舞台上方を見つめたときのキラキラおめめではなかろうか、と。指はまあ、いいだろ。あえて言うなら、「ゲームセンターあらし」みたいなかんじですわ。