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ナショナル・シアター・ライブ『フランケンシュタイン』感想つづき-ビクターVS怪物について その1

ナショナル・シアター・ライヴの『フランケンシュタイン』を見てまいりました、という話の続き。ここでは特に、ビクター(博士)と怪物の関係に注目してみたいと思います。

私が見たのはベネディクト・カンバーバッチが怪物を演じたバージョン。このお芝居の面白い点は、怪物役とフランケンシュタイン博士役をカンバーバッチとジョニー・リー・ミラーが交互に演じるという点。お互い役を交換しあうことによって、その関係性への理解が進み、解釈が深まるであろうという仕込みがなされています。しかし残念ながら、気が付いたら上映期間がおわってしまっていたため、カンバーバッチ博士のジョニー・リー・ミラー怪物版は未見。残念。下の写真のような博士は見てないのです。

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さて。

(以下ネタバレありのあらすじです)

物語は怪物の誕生シーンからはじまります。韓国ミュージカル版のように、電気仕掛けなガシャポンによって生み出されるのではなく、なんかもっと「生命誕生」イメージを引きずってスタート。小鳥のタマゴを透かして見たときにそこに何かが息づいているのを感じる時のような演出がなされます。

生まれ落ちた怪物は、フランケンシュタイン博士に拒絶され、街へとさまよい出ます。そこでも、醜さによって恐れられ、否定されるという体験をするのです。体の動きがまだ十分自由にはならない怪物。森の中で男たちが作っていた料理を食べ、熱いものを初体験したり、草や雨の感触を味わったりもする。しかし、世界を体験すると同時に、世界から拒絶されることも学ばされていくのでした。

人に出会うたびにひどい目に合う怪物は、やがて人里離れた小屋に住む盲目の老人と出会います。その家には、老人と息子夫婦が住んでいました。息子夫婦が畑仕事に出ている間に、老人から言葉を教わり、文学や歴史を学ぶ怪物。やがて、自分が来ていたマントに入っていたフランケンシュタイン博士の手帳(実験日誌)をも読めるようになり、彼がジュネーブに住むことを知るのです。

老人は息子夫婦に怪物を紹介すると何度も言いますが、怪物は自分の姿を見ることのできる彼らからは拒否されるに違いない、それが怖いと断り続け、ひそかに彼らのお手伝いをする日々(まきを割ってあげたり、畑の石をこっそり取り除いておいてあげたり)。

このあたりから、見ているこちらとしてはこの怪物がもんのすごくかわいくなってきます。オシャマな風に知識を得意げにひけらかしてみたり、雪に気を取られてはしゃいでしまう姿の無邪気さなどは、いとおしくさえある。怪物は次第に、自分が醜いというだけではなく、同類を持たない孤独な存在であることも理解しはじめます。そして、息子夫婦をみていて、自分にもパートナーが欲しい と思い始める。

ある日、怪物と老人が一緒にいるところへ息子夫婦がもどってきます。怪物の姿を見るや否や悲鳴をあげ、彼をを殺そうとする二人。老人が止めても聞きません。逃げ出す怪物。老人とのやり取りの中で、怪物に共感しはじめていた観客たちは、息子夫婦が怪物を追い出す下りに胸が締め付けられるでしょう。でも、物語は、ここで観客に怪物に対する同情・共感を許さないのです。油断ならないぜ。

息子夫婦に追い出された怪物はこれまで学んだ知識を活用し、その感情の持って行き先について考えます。そして出した結論は「復讐すること」。怪物は老人と息子夫婦が住む小屋に火を放ち、三人を焼き殺してしまうのです。あんなに親切に、自分に愛をあたえてくれた老人に対しても等しく「復讐」でしか答えられない怪物。愛を受け入れられない怪物の姿が浮かび上がってきます。

怪物は学んだ「復讐」をさらに進めることにしました。ジュネーブへとビクターを尋ね、湖のほとりで遊ぶ一人の少年を見つけます。彼はビクターの弟。怪物は弟を殺害し、ビクターに宣戦布告するのでした。弟の死体のそばに、自分の実験日誌の一部を発見したビクターは、怪物の存在を確信するのでした。

前半は怪物中心にストーリーが展開してくるのですが、ここで始めて、ビクター・フランケンシュタイン博士の困ったちゃんぶりの半端ない様子が描かれます。行方不明になった弟探索にでかけようとすると、父親に「お前が来たらもっとめんどくさいことになる!」みたいなことを言われるし。もっと向き合って話をしようという婚約者のエリザベスに対しても、だって会話するネタがないじゃないか、と返すコミュ障ぶり。ある意味、彼も彼のいるべき世界において「はみ出した」存在であることが示されるのです。韓国ミュージカルのビクターのほうが、なんぼか人間的ですよ。あれ。

で、山の中で出会うビクターと怪物。怪物を見て、何を置いても自分が作ったものの完璧さに狂喜するビクター(「すごい、筋肉がうまくつながってる!」みたいなことを言う)。このあたりも、ビミョーなビクターのオタクぶりが現れているのです。と同時に、怪物が人々に害を与えると判断するや否や、彼を破壊しようともします。まあ、そんな冷たいやつなんです。ビクターは。そんなこまった創造主ではありますが、頼む人もほかになし、怪物はビクターに「伴侶を作ってほしい」と懇願します。

躊躇しつつも、女性を作るという「新たな創造」の誘惑に魅せられてしまうビクター。伴侶をつくることを了承し、エリザベスを捨てて、実験のために旅立つことに。離れた島にラボをつくって閉じこもり、漁師に死体を集めさせ、怪物の伴侶づくりにとりかかります。

そんな実験の日々の中、怪物に殺された弟が夢枕に立ち、人間はどうやって作るのか、それが人殺しだったらどうするのか、とビクターに問いかけます。うなされるビクター。

夢から覚めると、そこに怪物がやってきます。ビクターは怪物に伴侶がほぼ完成したことを告げ、その美しい姿(起動前)を見せるのでした。歓喜する怪物。ビクターに愛とは何か尋ねられ、その心の動きについて説明する怪物。そんな怪物を横目に、ビクターは完成に近かった怪物の伴侶を破壊(殺害)してしまいます。いきなり壊すか!というビックラ展開。なにすんだよ!と嘆き悲しむ怪物。そりゃそうでしょう。

怪物を増やすわけにはいかない!ビクターは叫びます。夢枕に立った弟が言うように、怪物がうじゃうじゃ増えちゃうかもしれない悪夢を阻止しようと思い立った模様。

しかし、ですな。この部分かなり気になる急展開なのですよ。

怪物用に造った伴侶を起動させなかった理由ですが。夢のお告げ(?)に心動かされたというより、むしろ愛を手に入れることができると確信する怪物、ビクターの目に「愛とは何かがわかってそう」に映った怪物に、彼が一瞬嫉妬したからに見えるのです。えー、ここ、テストに出ますよ。いいですか、北極のシーンまで持ち越してください、このひっかかり。

で、話を戻しまして。

女性の死体が転がる小屋へ、ビクターの父と漁師がやってきます。何をしてたんだオマエハ!おこる父。ビクターはジュネーブに連れ戻されるのでした。怪物もまた小屋から逃げ出し、どこかへと消えてしまいます。

その後、ビクターはエリザベスと結婚式を挙げ、初夜を迎えます。平穏な日常を過ごすことにしたのかに見えます。しかしもちろん、ビクターのコミュ障ぶりは健在で、依然エリザベスに向き合えないでいる。色っぽい雰囲気ゼロで自分が作った怪物が危害を及ぼそうとしていることを彼女に告げ、そそくさと部屋を出て行ってしまう始末。初夜スタンバイしていたエリザベスはがっくりです。

のこされたエリザベスのもとに現れたのは怪物でした。最初エリザベスは怪物を気味悪がるのですが、次第に怪物の知性に興味をもち、心を開きます。子どもができて、それが自分みたいだったら捨てるのか。怪物はエリザベスに問います。しかしエリザベスはそんなことはしないと怪物に告げるのです。

ですが、エリザベスがあたえてくれる安らぎを、怪物はやはり、受け止められなかった。なんと怪物は油断していたエリザベスを犯し、殺してしまう。その現場に飛び込んできたビクターは、怪物に銃口を向けるのですが、撃てません。

逃げてゆく怪物。エリザベスを生き返らせると叫ぶビクターを、彼の父は、お前こそが失敗作だ、とののしるのでした。

そして、いよいよ、北極のシーンです。

ここに至るまでに、えらく長くなってしまいました。

ちょい息切れ。ーーーということで、もう一回続く!