ナショナル・シアター・ライヴ『フランケンシュタイン』見てきたよ‐ヒトの身体ってすごい!が第一声

フランケンシュタイン』と名付けられたものに、つい引き寄せられてしまう、全国10万人くらいのオトメのみなさま。いかがお過ごしでしょうか。今回はガッツリかみごたえのある演劇版「フランケンシュタイン」話でございます。

表題にありますナショナル・シアター・ライヴ(NTL)は、ロンドンのサウスバンクにある国立劇場、ロイヤル・ナショナル・シアター(RNT)が話題の演目をライブ収録したものを、映画館で上映するというシリーズです。DVD化などされていない話題の過去作品を見ることのできる貴重な機会。しかも日本語字幕あり(でも、変な訳あり)ときたものだ。

ナショナル・シアター・ライブの『フランケンシュタイン』は、2014年から(断続的に?)日本で上映されておりますので、ややいまさら感がありますが、先日このシリーズの『フランケンシュタイン』(ストレートプレイ)を見てまいりましたのでご報告を。

一言でいうと、役者さんの身体をコントロールするスキルってすごい。もう、その前提だけで、ノックアウトされますよ、という、一言になっていないなこれ、というシロモノでした。

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キャストはと申しますと。テレビドラマ「SHERLOCK(シャーロック)」のシャーロック・ホームズでおなじみのベネディクト・カンバーバッチと『トレインスポッティング」で注目を集めた(というか、アンジェリーナ・ジョリーの前夫で有名?)ジョニー・リー・ミラーの二人がフランケンシュタイン博士と怪物を入れ替え制で演じます。演出はロンドン五輪の開会式演出もつとめた映画監督、ダニー・ボイル。超豪華でくらくらするわ。

くらくらするのはキャストだけではございません。舞台の演出もステキ。天井にぶら下げられた無数の電球がまばゆい光をはなったり、夜空の星のように闇を照らしたりしつつ、時の経過や人々の心の変化にアクセントをつけていくところに、映像っぽい作りを感じました(って、映像でみてるんだけど)。ちなみに、私が見たのは、カンバーバッチが怪物を演じたバージョンです。

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 物語はメアリー・シェリーの原作に比較的忠実。ただし、ラストはこれまた異なっていいます。韓国の創作ミュージカル『フランケンシュタイン』ファンとしては、怪物とビクターの関係、ラストの展開が気になるところではないでしょうか。

ですが、その核心(?)に入る前に、このお芝居の魅力の一つには、役者さんの体の動きがあることを強調しておきたい。ミュージカルが音楽と声の魅力に左右されるように、芝居は役者さんの体が舞台を掌握するのです。

芝居冒頭は、上の映像にもあるように、オレンジ色に中から輝く細胞みたいな物体から、「怪物」が生まれ落ちる場面から始まります。細胞膜(のようなもの)を破って生まれ落ちた怪物。彼はつぎはぎの身体を与えられているが故、どの関節がどの方向に動くのか、うまくコントロールできない。

この、自分の身体の特性を理解していくために舞台中をのたうち回るシーンが、怪物のうめき声だけを音声に10分(いやそれ以上??)続くのですが、見てて全然飽きないのです。というか、まさにそこになにかの「生物」が生まれ落ちたことの実感、しかしそれはヒトとは何かが異なっている、と思わざるを得ない圧倒的な異物感。そういうリアリティがひしひしと迫ってくる。そしてその物体が放つ「異」なる存在感が、すんごく、気持ち悪いのです!

ナショナル・シアター・ライブが始まる前には、役者さんたちへのインタビュー映像が上映されていたのですが、そこで、怪物の動きを考えるために、自分の子供の動きやリハビリを受けている人たちの身体を観察したという話が紹介されていました。つまり、自由にならない身体とはいかなるものなのか、身体が未知のものであるとはどのような状態や興味を生むものなのか・・を、じっくり観察されているのです。にしてもですよ。その観察の成果をどれほど自分の身体の動きとしてうまく取りんでいることか。もう、「あんた、すげーよ」というしかない。北島マヤもびっくりです。

そして同時に、この冒頭のシーンはとても重要だな、と思いました。ここで観客は怪物の成長を見守る存在として位置付けられるとともに、最初に怪物を気味の悪いものとして眺めてしまうことで、安易な感情移入が禁じられてしまうとでも言いましょうか。

もちろん、物語の展開において、見ている方は、時として怪物の心情に同情し、共感し、そのまま彼と同一化して世界を眺めてしまいそうになる。しかし突然、怪物は残酷な行動に走り、彼は自らその「異なるもの」であることを観客に突き付けます。それは観客の同情心をあざ笑うかのような展開でもある。観客はつねに心かき乱されまくりです。

で、怪物とビクターとの関係についてなんですが。今回長くなったので、ここからは、続く・・ということで。

 

ちなみに、この映画、上空から舞台を映し出す映像も多用されていて、舞台を見にいった人たちより多くの視点から役者や演出を見ることができるのもお得感がありました。Kミュージカルシネマも、もうちょっと撮影技術をみならってほしいよ!と思わざるをえなかった。

(Kミュージカルシネマの映像についての記事は以下)

pokos.hatenablog.com