読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

韓国創作ミュージカル「阿娘歌」のモチーフ「都彌説話(도미설화)」とは?‐ドミって将軍じゃないんだね

阿娘歌(アランガ) 韓国の文化・社会

韓国の創作ミュージカル「阿娘歌(アランガ)」、土台になっているのは高麗時代に編纂された、新羅高句麗百済三国時代から統一新羅までの時代を扱う歴史書『三国史記』に記載された「都彌説話(도미설화)」というお話だそうで。そもそもはどんなお話なんでしょうか。というのが今回のテーマ。

f:id:pokos:20160409193518g:plain

(そんなに絶世の美女にも見えない「都彌夫人像」)

どの様な物語なのかといいますと。

時は百済4代蓋婁王(ガイル王)の頃。百済の平民都彌(ドミ)は義理がたい人物として評判であり、美しく心優しい妻を持っていた。この妻の評判を聞いた蓋婁王は、ドミを呼び「君の妻、噂に聞くほどほんとに貞淑かな?誘惑されたらコロッといっちゃうんじゃない?」ときくと、ドミは「人の心は変わりやすいかもしれないけど、うちの嫁は死んでもかわらんですだ」と答えた。王は「えー、まじ?」と思い、臣下に王の服をきせ、ドミの妻のもとにむかわせた。そして「YOUがチョー美人って噂は聞いてたよ!ドミと勝負して勝っちゃったから、YOUは僕のものだYO。君は入宮することになったからよろしくね!さ、さっさとヤっちゃいましょう」といって迫った。ドミの妻は、「王様のいうことならーしかたないけどー、くんくん、あら、アタシ臭いわね。ちょっと着替えてくるネー」といってそこから逃れ、はした女に服を着せて偽の王のいる部屋に送り込み、貞操を守った(つか、この臣下の人とはした女はその後どうなったのであろうか)。

しかし、この替え玉妻作戦に気づいた王は怒り狂う。そして夫のドミにテキトーな罪をかぶせて両目をつぶし、小舟に乗せて川に流してしまった。「もうお前の夫はいないんだ、俺のいうことをききやがれ、へっへっへ」ドミの妻に迫る王。しかし彼女は「ちょっと今、女の子でー、体洗ってからでいいかな?」と王を阻止し、スキを見て逃げ出した。必死で逃げ切り川べりにつくと、夫をおもって号泣する妻。するとどうでしょう。ふいに一艘の船があらわれたではありませんか。その船にのって「泉城島」にわたった彼女は、そこに愛しい夫の姿を発見。再会を果たすのです。そう、ドミはまだ死んでなかった!ヨカッタネー。

その後、二人は草の根を食べながら生き延び(いきなりサバイバル度アップ)、ついには高句麗の䔉山ふもとについた。高句麗人は二人をかわいそうにおもい、服や食べ物を与えた。以降夫婦は、高句麗で物乞いをしつつ余生を過ごしたという(え、まじで。ヨクナカッタネー・・・)。

という、けっこう、ワイルドな話でした。ドミ夫婦やられる一方。

 

ちなみに、ここに登場する王は蓋婁王とされていたのですが、その後の研究で注釈作成時に、王権の強さやお話に出てくる地理的状況から判断して、蓋鹵王(ケロ王)の時代ではないかという説がだされ、今日ではこちらが正しかろう、という結論にいたったそうです。

さらにいうと、説話ではドミの妻に名前はありません。彼女にアランという名前をあたえたのは1937年に書かれた小説パク・チョンファの『アランの貞操』だそうです。さらに、1996年にはチェ・インホが『夢遊桃源図』(日本ではコールサック社というところから発売されていたようです。これを原作とするミュージカルも作られたことがあるようですね)にまとめ、高句麗でのアランとドミの生活を書き込みました。まあ、あの終わり方だと納得いかないよな。

 

ともあれ、もともとのお話は「妻が夫に対して貞操を守る」という、伝統的な「烈女物語」の系譜にあり、横暴な王と非力だがむしろ倫理的に勝る平民のお話なのですが。ここれを読んで、「阿娘歌(アランガ)」は、ドミとアラン夫妻にのみ焦点をあてるのではなく、ケロ王という「権力を持つもの」にも光をあて、単なる暴力野郎ではないキャラクターとして描き出したところに勝因がある!と確信したのでありました。力を持つということは、孤独でもあり、それに押しつぶされてしまう悲哀というのもあるのだ。こうしたメッセージが含まれることで、「都彌説話(도미설화)」は現代によみがえったのであります。

 

そしてもう一つとっても現代的な「都彌説話(도미설화)」の復活劇として・・。いま、各地でドミが流された川があるのはうちの地域だぜ!争いがおこっているようで。例えば、忠清南道保寧市は90年代からさまざまな説話関連アイテムの開発・観光化をはかっており、現在学習マンガ(?)まで作成しております。

f:id:pokos:20160409204321g:plain

(保寧市が2013年に作成した漫画『ドミ、目を失って千年を眺める』)

これは、ドミ夫婦が保寧の名所を尋ね歩く漫画だそうで。他方京畿道河南市では、子ども向け戦略として史学界の考証を引きながら、それに先立つこと8年、2005年に『ドミ河の愛』をだしています。

f:id:pokos:20160409205039g:plain

(歴史長編童話『ドミ川の愛』)

いやいやどっちもウソだね本家はウチだから、とソウル市の江東区ではドミ夫人の銅像まで建てちゃいました。

f:id:pokos:20160409211030g:plain

 

いずれにせよ、ドミ夫婦、大活躍中。