白王子Vs黒王子―Kミュージカルシネマ「マリーアントワネット」における男性キャラの魅力にも言及しておきたい
ミュージカル「マリーアントワネット」では、二人の魅力的な男性キャラクター、フェルゼンとオルレアン公が描かれます。ここでは彼らを白王子と黒王子と名付け、この二種類の王子の魅力に迫ってみたい、というのが今回の目的。
既に、Kミュージカルシネマ「マリーアントワネット」のストーリーについては、マリー・アントワネットと、マルグリッド・アルノーという二人の女性キャラクターに集中して妄想を繰り広げさせていただきました。
しかし、まだ語り足りないとおもいまして。その「足りなさ」を突き詰めてみたところ、そうだ、カイとキム・ジュニョンさんの魅力について言及してないわ!と思い至ったのであります(遅い)。
何を演じても色気があるといわれるキム・ジュニョンさん。김준현さんの日本語表記、キム・ジュンヒョンとすべきかキム・ジュニョンとすべきかいつも悩むキム・ジュニョンさん・・。オルレアン公は権力を得るために革命を目指す市民たちを利用する野心家という役どころを演じます。
1幕中盤で「I am best 난 최고니까」を歌い上げ、俺サイコーを連呼する「俺様」キャラ。ここで一気に存在感をしめしたオルレアン公に心をもっていかれた乙女は多いはず。悪の魅力炸裂。まさに黒王子降臨の瞬間といえましょう。
(I am bestと迫ってくる黒王子。ええ、最高っす)。
つまり、黒王子とは、自己愛の激しいギラギラ権力志向な「俺様」キャラ。現実にいたら、イケメンだろうがなんだろうが相当うっとおしいであろう人物。しかし各種物語において、女子の心をもっていくのはこういう王子なのです。「のだめカンタービレ」の千秋先輩のような、「オオカミ少女と黒王子」の佐田恭也のような、壁ドン上等系。(この二人はギラギラではないですが)。
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しかし、黒の魅力は白あってこそ引き立つもの。光がまばゆければまばゆいほど、影も濃くなると月影千草も言っている(マンガ『ガラスの仮面』より)。ミュージカル「マリーアントワネット」では、その点がきっちり抑えられているのが素晴らしかったのではなかろうか。ぶらぼー。王道の白王子、フェルゼンは甘く、そして彼女のためを思って彼女の行動をたしなめたりもしながら、マリーに愛を捧げます。この甘々さ加減にくらっときたよ。
(前半では、Kミュージカルシネマでは見られなかったチョン・ドンソク王子が、中盤ではカイ王子が愛をささやいてくれます。きらきら)
こういう王子、最近の少女マンガでは絶滅しつつあるのではなかろうか。70年代くらい(の少女マンガ)にはたくさん生息していた気もするのですが。いまや絶滅危惧種。コウノトリかイリオモテヤマネコか。最近の王子で真っ白だぜ!、と感じたのはこの人くらい。
『俺物語』のヒーロー剛田猛男(ごうだたけお)。純粋無垢にして男気あふれる正義感の強い「漢(おとこ)」。表紙の一番手前の人物です。柔道マンガに見えるかもしれませんが、少女マンガですから!『別冊マーガレット』な恋愛ものですから!!
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く、黒王子の系譜とくらべて微妙な地点まで到達してしまった、少女マンガ中の白王子。2010年代を生きる白王子は、一ひねりしないと生息することを許されないのです。非常に残念です。でも猛男はステキです。
というわけで(?)われわれはもう一度、白王子の魅力を再考すべき時にきているのではなかろうか。白王子上等!ロマンティック大盛りで彼らを受け入れようではないか。こうした気概をとりもどすきっかけとなるのが、まさにカイ・フェルゼンの魅力なのです。
とはいえ、白王子は基本「よい子」なので、フェルゼンがマルグリットに「君は愛に飢えている」的な指摘をしちゃったり、マルグリットに「あなたには恩があるから」と言われて助けられるのになんだかんだ言って遠慮がなかったりするのを目の当たりにすると、「そいういうこと思っても、責任とれないなら言うなよ」とか「助けられ度の差があるじゃん」と突っ込んでしまいそうになるのですが。
はっ、いかんいかん。自分が黒くなってどうする。