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荷造りについての考察-「40秒で支度しな!」、その時「私」(レベッカ)と「ルーシー」(ジキル&ハイド)のとった行動とは

劇中では、物語上何らかの必要にせまられて荷造りをするシーンが描かれることがあります。昨年ブレイクしたかんじの「ミニマリスト・ライフ」に心惹かれる私は、この時、彼らがトランクに何を詰めているのかに興味がある。また、彼らがどのくらいのスピードで支度できるのかにも興味をもっております。そして今回は、支度の速さが持つ意味について、あえてミュージカル作品を通して考えてみたい。いつも以上に、わけのわからない視点でお送りします。ミュージカル経由する必要、まったくないじゃん、というつっこみはおいておいて。

国民的アニメ『天空の城ラピュタ』には、空中海賊のお頭であるドーラがパズーに放つ「40秒で支度しな!」という名セリフがあります。ミニマリスト界隈で は実際に40秒で支度できるほどのミニマムな所有物を目指して、しのぎが削られている模様(たぶん)。確かに、40秒で用意できるもの、それはもっとも必 要なものだけでしょうから、ミニマム化のシュミレーションには最適な条件といえましょう。

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さて、ミュージカルにおいても、とりあえずさっさと支度し、旅立たなければならないというシーンが出てまいります。最近見たので記憶にあたらしいのが、ミュージカル「レベッカ」における「私」と、「ジキル&ハイド」のルーシーでしょうか。ちなみに以下では、「レベッカ」は韓国版演出(2016)、「ジキル&ハイド」は日本版演出(2016)という統一のなさで言及させていただきます。

 

 (韓国版「レベッカ(2016)」鑑賞記では、まったく「私」について語ってなかったな、そういえば、という過去記事はこちら)

pokos.hatenablog.com

pokos.hatenablog.com

 

えー、話は荷づくりに戻りまして。

「私」はモンテカルロのステキなホテルで大富豪のマキシム・ド・ウインターと恋に落ち、夢心地な日々をすごしていたのですが、自分の雇い主のヴァン・ホッパー夫人が帰国するというので、しぶしぶ荷造りをすることになります。

 他方ルーシーは、自分の部屋(?)でジキル博士からの手紙を受け取り、いますぐロンドンを離れるように指示されます。理由もわからず旅支度をするルーシー。実は自分を殺そうとやってくるハイドがすぐそばに迫っているのです。それを知らず、のんきにジキル博士からもらった手紙を読んで乙女気分に浸っちゃったりしているルーシー。早く支度せんかい!

 

状況は異なれども、二人がどりだし荷物を積めるのは「トランク一つ」。「私」はモンテカルロのホテルに長期滞在してたし、ルーシーはそこで生活していたはずなのですが、彼女らは潔く「トランク一つ」で旅立つのです。米米クラブです。浪漫飛行なわけです(「私」は旅立ってきたのですが)。

しかもリーマン持参のアタッシュケースくらいのトランクときたもんだ。ミニマリストの皆さま、スーツケースといわず、これくらいのサイズを目指しませんか。

寅さんしかり裸の大将しかり、物語の人物はとても身軽です。「私」も「あんたはその服しかもってないのかい」と言いたくなるほど、トランクには本しか詰めていきません。ルーシーに至っては「それ、今着たほうがいいのでは?あなた今下着でしょう」と言いたくなる一張羅の服1枚をトランクにイン。なんと潔いことか。まあ、お話だからね。

 とはいえ、彼女らの旅支度の作業工程は、40秒とはとても言えない代物。「私」は旅支度をしながら、「あー、かえるのやだなー、マキシムとの思い出を瓶詰にしておくとかできないかなー、かえりたくないなー」という気分で「행복을 병 속에 담는 법Zeit in einer Flasche」を歌います。往々にして、荷造りもゆっくりになる。ルーシーも、「新たな生活 A NEW LIFE」を歌いながらの荷造りです。まあ、ミュージカルなので歌わずしてなんとする的な支度の仕方とでもいいましょうか。そもそも歌ってたら40秒ではおわらないわけで。

 

私はこの二人の荷造りシーンを回想する中で、一つの気づきを得ました。ドーラのいう「40秒で支度しな!」は、まさに危機が迫る状況で、今いるその場を捨てていく人に向けた言葉なのだと。二つのミュージカルでいえば、「ジキル&ハイド」のルーシーにこそ投げかけられるべき台詞なのです。幸せがその場にあって、そこから早急に離れる必要のない、むしろ離れたくない「私」のようなケースでは、40秒で支度できてしまってはいけない。なんせ、だらだら支度しているうちに、マキシムがプロポーズしにやってきてくれるのですから。のろのろ上等!だらだらサイコー(あれ、何か違うな)。

 

つまり、「40秒で支度できるかね、君?」テストとは、つねに今ここに縛られず、そしてそこをいつでも出ていくことができるという心の持ち方を測るものなのです。ミニマリスト・ライフというのは、単にモノを減らすのではなく、むしろここからいつでも旅立てるという意識のありようをさすのだなあ、と思い至ったのでありました。

 ・・これだけのことを言うために、「ジキル&ハイド」と「レベッカ」を持ち出す必要は無い気がするのですが、まあ、ミュージカルライフ(沼)ここからは、今しばし旅立つことはできそうにない・・ってことで。