韓国ミュージカル☆ライフ

韓国ミュージカルを楽しみつくすブログ

ミュージカル「スモークSMOKE」ライセンス公演決定-日本語でゴー!

植民地期の朝鮮半島で活躍した詩人であり小説家の李箱(イ・サン)の生涯を扱い、創作の苦悩とよろこびを描く韓国の小劇場系創作ミュージカル「スモーク스모크SMOKE」の日本ライセンス公演が発表されましたね!

musical-smoke.comホン役の説明に「聖母マリアのように包み込む、母性の象徴のような<紅>」という文言がおどっているのが、ちょびっと不安。ホンは母性だけを象徴するのではなく、多面性をもつ「女性性」(どの性の人の中にもありうるような抽象的な女性イメージ)の象徴だと思うので・・。むむ。

 

韓国のミュージカル情報サイトでも記事が出ています。

www.themusical.co.kr記事によると、2018年10月4日~28日まで東京の浅草九劇にて上演される模様。

演出:菅野こうめい

チョ:日野真一郎LE VELVETS)・木暮真一郎

ヘ:大山真志

ホン:高垣彩陽池田有希子

制作:ATRAS

がキャスティングされております。『キムジョンウクチャッキ(あなたの初恋探します・キムジョンウク探し』日本版を制作した会社がライセンスを購入したみたいですね。

李箱の詩の日本語翻訳版が曲にも用いられるのだとおもわれますが、それはそれでまた違った雰囲気になりそうです。

 韓国初演版の感想を、気持ちの高ぶりとともに書きなぐった記事は以下に。そういえば、(4)を途中まで書いて放置しておりました。後日完成させたいところ・・。

pokos.hatenablog.com

pokos.hatenablog.com

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ミュージカル「国境の南」(2018年・再演)見て来たよ-ソウル芸術団のクオリティが光る!

暑い日が続きますがみなさまいかがお過ごしでしょうか。ソウルに避暑に行きたい今日この頃。チケットとっちゃう?という誘惑にかられております。

さて、今回取り上げるのは、ミュージカル「国境の南」。2016年に初演された本作品、2018年6月29日から7月15日までドゥサンアートセンター・ヨンガンホールにて上演中でございます(というかもう終わる)。30%の外国人割引価格がインターパークグローバルにて設定されておりますが、パスポート確認されますのでご注意を。見て来たキャストはこちら。

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ソノ:カン・サンジュン

ヨナ:ソン・ムンソン

キョンジュ:ハ・ソンジン

パク刑事:チェ・ジョンス

ミュージカル「国境の南」とは?

韓国におけるドラマ・映画、そしてミュージカルの主題、その霊感の源泉となる歴史的事象に「植民地期」と「朝鮮戦争」の二大トラウマがあることは間違いないでしょう。さらに言えば、それをもたらしたもの、そこから引き起こされたものもまた、多くの作品となって世に問われてきましたし、たぶんこれからも多くの秀作が排出されると思われる。このミュージカル「国境の南」もまた、韓国近現代史モノの一つとして、南北の分断という現実の中で生きることを、一般の人々の目線から考えていく物語なのでございます。

本ミュージカルは2006年に制作された映画「国境の南」をベースとしておりまして。これは、朝鮮戦争を直接に扱った「ブラザーフッド」、軍隊から現代の分断国家をみた「共同警備区域JSA」などに続き、恋愛や人の情というレベルから「分断」をとらえようとしたものでございました。チャ・スンウォンが主役をつとめたこの映画、日本では「約束-Over the Border」というタイトルで公開されておりますが、「JSA」や「ブラザーフッド」レベルで受け入れられたかというと、相当「いやまあ、そんなふうにはね、ごにょごにょ」と口ごもらざるを得ない状況でございました。これは、韓国においてもそうであったようでして。

www.kadokawa-pictures.jp

物語の主人公は、北朝鮮の青年ソノ。マンスン台芸術団のホルン奏者。芸術団仲間で女優の恋人ヨナがいる。ある日、南で成功した祖父に呼び寄せられる形で、ソノの家族は脱北を決意する。家族を捨てることはできない彼は、北に恋人を残したまま南へと渡るのであった。脱北後、南へ彼女を呼び寄せるための金を稼ぐ日々を過ごすソノ。しかし、ヨナを脱北させることは難しく、連絡もままならない。時間だけが過ぎていき、風の便りに彼女は亡くなったと聞くことになる。絶望と諦めの中、彼は南で家族を持つことを決めた。穏やかな日々と家族の成功。彼は南で自分の居場所を築いていった。そんな穏やかな日々の中、ヨナが命がけで脱北し、南へやって来たという知らせを受けるー。というような物語。彼が取る一つ一つの選択が、日常の力学の中でやむを得ないものとして描かれていきます。これが切ない。ロマンチックな運命の恋が実らないところに、「現実の幸せ」が描かれていきます。一見「愛」がこの物語の主題に見えますが、実は「支えあう人々と生きていくこと」を日常の中で確認していくプロセスが重要なのだとメッセージしているように思えるのです。単なるメロで終わらないのは、感情を歌に乗せて存分に語れるミュージカルならではの効果なのではないでしょうか。

ソウル芸術団とは?

さて、本公演はソウル芸術団(SPAC)の創作ミュージカルとして制作されております。

www.spac.or.krソウル芸術団と言えば、ミュージカル「神と一緒」や、ミュージカル「尹東柱、月を撃つ」などでもおなじみですね。劇団は1986年に「88ソウル芸術団」として文化体育観光部(日本でいう文部科学省)傘下の国公立芸術団体として発足し、30年の伝統を持つ。年間3-4本の創作公演を行い、国際交流の場における役割も期待された組織なのです。特に、設立当初には、「南北文化交流」という「交流」がその目的にあったようですので、ミュージカル「国境の南」はまさにソウル芸術団のアイデンティティに関連する作品であるといえましょう。

創作劇と韓国的公演コンテンツにコダワリをもつソウル芸術団ならではの「北朝鮮の芸術団」演目のシーンなど、見所もたっぷりのミュージカル「国境の南」。たぶん定期的に再演されると思うので、今回見逃した人も、次回ぜひご覧になってみてください!

 

 

ミュージカル「美人」観覧記ー1930年代京城に韓国ロックの神が降臨!

みなさまご無沙汰しております。なかなか記事を書けずにおりますが、着実にミュージカル鑑賞はすすんでおりまして・・。というわけで、今回紹介するのは、ミュージカル「美人Miin」!弘益大大学路アートセンター大劇場にて、2018年6月15日から 7月22日まで上演中。見て来たキャストはこちら。

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ガンホ:チョン・ウォニョン

ガンサン:キム・ジョング

ビョンヨン:ホ・ヘジン

ドゥチ:コン・ヨングッ

マサオ:キム・テオ

韓国ロックのゴッドファーザーの曲を植民地期舞台の物語に移植?

ミュージカル「美人」の物語は1930年代ごろ(たぶん)の京城(現、ソウル)。日本の植民地支配を受けつつも消費文化が花開く京城の、とある映画館が舞台でございます。主人公のガンホは弁士(無声映画の解説者)を務めつつ、またその歌声で人々を魅了し、その才能でオリジナルの曲を作ることに情熱を傾ける男。そして、ガンホを支えるやさしい兄のガンサンは、実は抗日運動の闘士であった・・。というような、王道日本植民地期モダンボーイモノ。この物語に関しては、もう少しひねりをきかせてほしかった・・と思わずにはいられない「京城」モノあるあるパターン。消費文化に耽溺していた主人公が、身近な人に感化され、自分たちにとっての「大事なモノ」を守るために大日本帝国に立ち向かう・・。ドラマ「京城スキャンダル」でできた枠組みを抜け出すのはなかなかに難しい、と思わされる強固な王道力。

が、このミュージカルの面白い点は、時代を表現する音楽に1960年代に「ロック」な音楽をひっさげて登場、韓国ロックの創造主となった申重鉉(シン・ジュンヒョン)の曲をこれでもか!と使用しているところにあるのです。京城にロックはおかしいだろう!とツッコみつつも、いつの間にかその音楽に乗せられてしまう。

申重鉉とは?

彼の音楽は、現在もあまたの歌手がリメイクしており、ぜんぜん古いという感じがしない。この、奇妙な新しさと、ミュージカルに設定された時代の「モダン」な表現がうまくマッチしてしまうところが、このミュージカルの良さでしょう。

申重鉉(シン・ジュンヒョン)の曲のリメイク例をあげておいましょう。たとえば、日本版がつくられたドラマ「シグナル」ですが、韓国オリジナル版の挿入歌に印象的な曲「떠나야할 그사람(ここを離れねばならない人)」があります。この曲の作詞・作曲者が申重鉉(シン・ジュンヒョン)なのです。

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この歌のミュージカル内の歌唱はこちら。

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ミュージカルのタイトルにもなっている「미인 (美人)」も超有名曲。

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ミュージカル内では、ガンホが作曲した曲という設定で、ラジオで公開するやいなや「禁止曲」になってしまいます・・。

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こうした曲たちが、京城の映画館(かつショー舞台)で歌われていきます。曲は名曲ぞろいなので、その歌だけでも心持っていかれる迫力の舞台。特に、申重鉉(シン・ジュンヒョン)とともに青春をおくったらしきおじさまおばさま方が客席には多く、ますます劇場は熱気に満ちていくのでございました。

フランケンもいいけど、「美人」もね!