韓国ミュージカル☆ライフ

韓国ミュージカルを楽しみつくすブログ

ミュージカル「タイタニック(TITANIC)」(韓国版・2017‐8年)見て来たよ(2)ースター中心でなくても魅力あふれる舞台

ミュージカル「タイタニック」が2017年11月8日から2018年2月11日までシャーロッテシアターにて上演中でございます。舞台セットがうまくタイタニックの世界を表現している本作品。もちろん魅力はそれだけにとどまらず、韓国ミュージカル界の至宝(?)たちによる演技と、こうした主役級のひとがアンサンブルとなって歌われる合唱部分のすばらしさ。観光のついでに、ロッテワールドタワーにのぼったかえりに、ぜひ足を運んでほしい作品でございます。(シャーロッテシアターは、蚕室ロッテエリアにあります)。

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(人が途切れた瞬間素早く撮影しようとしすぎて変な角度に)

マルチ・ロールが生きる

本作品では、最大1人5役を務めるマルチ・ロール方式で配役されておりまして。インターパークなどで確認できるキャスト表では、クルー、1等船室の客、2等船室の客、3等船室の客という風に分類され、あたかも1役しか演じないかのように見えますが。いやいや例えば、韓国の「お花様」ことチョン・ドンファさん(チョン・ドンファさんは愛称が꽃님)は、あるときは1等船室にのりくむマダムのつばめ、あるときは3等船室でアメリカンドリームを語る若者、ある時は楽師、そしてキャスト表にあるのは「無線技士」(ほかにもあったかも)。このように、俳優さんたちが複数の役を演じることによって、俳優と役柄の個性が過剰に一致し、その役柄が物語中の登場人物として重要になりすぎない、そこにフォーカスされすぎないという効果が発揮されます。そのため、無名の乗客が、それぞれの生を生きた場としてのタイタニックという空間が、よりいっそう浮かび上がってくるのです。だれかが主人公なのではなく、それぞれが、それぞれの人生をもって集まっていることがひしひしと伝わる。主役の誰かが逃げ延びれば、安心して胸を撫で下ろせるような悲劇ではなく、それは皆のものであるというメッセージが、きっちりとつたわるのはこの演出のおかげでもあるでしょう。

まあ、一幕終わりにキャストが舞台上に立ち、これからタイタニックにおこる悲劇を予感させるシーン。皆が一定の方向に揺られ、傾くシーンで、「そこ、微妙にずれてるから!」みたいなキャストがいたのはご愛敬ということで。あるいは、二幕終盤、自分たちが我先にと避難するのではなく、船室の客に最後まで声かけし続け、その職務に忠実であろうとしたベルボーイに、船長が君はいくつだと尋ね帰ってきた回答に、客席が「え、そんな設定だったのかよ!」とざわめいたのもご愛敬ってことで!

ともあれ、個々の俳優さんたちの演技上手な部分やネタッポイ部分もちらっと挿入され、ファンにも楽しめ、かつ、韓国のミュージカル俳優さんを知らないの、とおっしゃる韓国ミュージカル初心者の方々にも楽しんで頂ける作品なのではないでしょうか。

2018年10月からは、日本でトム・サザーランド演出版が再演されますし、演出見比べなども楽しそう。おススメです!

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日本版の詳細は以下に!

www.umegei.com

ミュージカル「ハムレット・アライブ」(2017‐8年・初演)見て来たよ-ホン・グァンホかコ・ウンソンか、それが問題だ

韓国の創作ミュージカル「ハムレット・アライブ」が2017年11月23日から2018年1月28日まで芸術の殿堂トゥオル劇場にて上演中。ハムレットにはホン・グァンホとコ・ウンソンがダブルキャスト、どっちで見るかが悩ましいところです。ちなみに、「本公演は突然の銃声効果音、火薬と焦げによる煙が生じる場面があります。妊婦・心臓の弱い方は観覧時に注意してください。」との告知がございますのでご注意くださいませ。MDショップに「買うべきか、買わざるべきか、それが問題だ」と書かれているのもチェック!で、見て来たキャストはこちら。

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ハムレット:ホン・グァンホ

クローディアス:ヤン・ジュンモ

ガートルード:ムン・ヘウォン

ホレイショー:ファン・ボンシク

ヤン・ジュンモ教授のクローディアスが素敵

ホン・グァンホハムレットに歌い負けないクローディアスとしてヤン・ジュンモ教授を選択したのはただしかった!と(勝手に)満足した仕上がりでしたよ、同顔クラブリーダー(ヤン・ジュンモさんは、老け顔なミュージカル俳優さんと子どものころからこの顔だち、をスローガン(?)とするセクシー同(童)顔クラブを結成中)。兄の所有する王座と妻を奪い取る野心家ながら表面上はそれを隠そうとするクローディアスが、紳士的な演技と情熱あふれる歌声のギャップによって十全に表現されておりました。ヤン・ジュンモさんの安定感が、劇の完成度をたかめていたと思われる。

というのも。ホン・グァンホさんの歌声はやはり素晴らしいのですが、ハムレットはこれまで腐るほど多くの俳優が演じて来た役柄だけに、歌唱力プラスの演技力が試されるとなると・・。ミュージカル「シラノ」では、ん?歌の表現力に演技力もおいつきはじめたかな、という期待感があったのですが。「ハムレット・アライブ」では、歌として表現できることと(まあ、これがすごすぎるからなんですが)、演技部分で表現できることの差が大きく感じられてしまったような。それは、今回のハムレットは「アライブ」とうことで、人々(観客)と共有できるような苦悩を表現する存在と解釈され、役柄設定されており、その時点で演技の要求水準が半端なかったからかもしれません。なので、コ・ウンソン版がどうだったのかが知りたいところです。とはいえ、抜群の歌唱力で表現される歌唱パートでは、めちゃめちゃ心揺さぶられるのは間違いございません!

ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ

ちなみに、「ハムレット・アライブ」では、ローゼンクランツとギルデンスターンがなんだかやたら活躍し、彼らの最後もきっちり舞台上で描かれておりました。通常の「ハムレット」では、彼らは死んだとおまけのように付け加えられるだけの可哀想な役どころ。これを憐れんで(?)ウィリアム・S・ギルバートが「ローゼンクランツとギルデンスターン(1874)」を、トム・ストッパードが「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ(1967)」という二人劇を書いてあげた(?)ほどなのです。この二人、別に何も悪いことをしていないというのに、ハムレットに手紙を書き替えられ、イングランド王に殺されてしまうんですからね。気の毒。

で、今回この二人はいかにあつかわれるのか?を気にしておりましたところ。漫才コンビのように色違いのスーツで登場した双子のようなお調子者として描かれる二人。それなりの存在感をもつ役柄になっており、クローディアスに命じられ、ハムレットイングランド王のもとへと送りとどけるさいには、持たされた秘密の手紙(ハムレットを殺せとイングランド王に頼む手紙)を見ちゃったり、それをハムレットに書き換えられても気づかなかったり、最後にはイングランドで殺されちゃったりするシーンがきっちりかかれており、胸をなでおろしたのでありました。なんか、よかった・・。

映画「神と一緒にー罪と罰 신과함께‐죄와 벌」(韓国映画・2017‐8年)見て来たよーUSJでのアトラクション化希望!

3月にはミュージカル版「神と一緒」再演を控えた本作品。映画版を見てまいりました。2017年12月20日に封切られ、あっというまに1000万人突破。ウエブマンガ原作で映画化されるらしいという風の便りをきいてから、ずいぶんまたされたここ数年。二部作中の第一弾公開とあいなりました(第二部は2018年8月公開予定)。

韓国映画ではおなじみのメンバーが勢ぞろい。ミュージカルでもおなじみのキム・スロさんもちらっと登場しますので、劇中「キム・スロをさがせ!」を楽しむのもよし。

とはいえ、CGをこれでもかと多用した画面は、VRゲームのし過ぎでゲロはく人の話を笑えない、刺激的画面でございました。USJでアトラクションにしたらいいのでは。ある意味伝統的地獄めぐりをハイテク化する方向で、お寺の地獄めぐりを刷新するとか・・。

ともあれ、かつてミュージカル「ザ・デビル」の演出ビームにくらくら来られた方は、できるだけ後ろの方の席を予約されるほうがよかろうとおもわれます(後ろに座ってたおじさんも同様の意見をつぶやかれておりました。わかるわー)。

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一部の話によると、4DXで制作するも、ロッテシネマでは4DX上映館がなく、その規格が生きてないらしいとも。CGVの4DXでみたほうがいいみたい。

www.youtube.com

映画では、原作マンガ(ミュージカルはこちらを踏襲)に登場するジン・ギハン弁護士は登場せず、過労死してしまったしがないサラリーマンのキム・ザボンは、消防士で「貴人」の位を与えられた魂として49日の旅をすることになる。同時並行してすすんでいた軍隊での事故をめぐるエピソードが、主人公の消防士の弟の身に降りかかったものとし、そこに家族の物語を挿入することで、より一体感のある(そして韓国映画らしい家族愛にフォーカスした)ストーリーとなっております。

また、今回ザボンの弁護人をつとめるあの世の三差史たちは、49人を転生させることができれば、自分たちも望むままに転生できるという設定になっておりました。チュ・ジフンが務める日直差史のヘ・ウォンメクは「俺は財閥2世に生まれ変わるぜ、韓国はそうでなけりゃ地獄よりひどいからな」とかなんとかいう、皮肉を込めた希望を持っていたりもして。マンガ・ミュージカル版とはことなるキャラクターを楽しめますよ。

「神と一緒」ロケ地巡りも楽しそう

さて、本編では消防士のキム・ザボンがあの世へと旅立つシーンからはじまるわけですが。そこで燃えているのが釜山にあるセンタムシティKNN社屋ビル。もう一つが鳴旨国際新都市らしい。ラストの竜巻シーンが展開する軍の駐屯施設は影島区にある旧海事高校、消防署は機場消防署、などと、釜山および周辺各地に撮影地が広がっている模様。とはいえ、バトルシーンではソウルのアイコンとなったロッテワールドタワーもちらりとうつるのは、配給会社がロッテエンターテインメントだからなのですかね。映画公開後釜山のロケ地検索状況は好調なのだそうで。日本公開後(2018年4-5月頃とのうわさ)は、ロケ地ツアーなどもおこなわれるかもしれません。

ともあれ、ミュージカル「神と一緒」と見比べる楽しみもあり。寒いソウルでの午前中の過ごし方として、映画「神と一緒」はいかがでしょうか?