韓国ミュージカル☆ライフ

韓国ミュージカルを楽しみつくすブログ

ミュージカル「ソピョンジェ(西便制서편제)」予習-名作映画が無料で見られるよ!

ミュージカル「ソピョンジェ(西便制서편제)」(2017年版)がもうすぐ開幕。2017年8月30日から11月5日まで、狎鴎亭のBBCHシアターにて上演予定の本作品。もちろん原作は超有名な1993年公開の韓国映画西便制서편제 Sopyonje 」でございます。いやまあ正確に言うと、映画の原作は李清俊(イ・チョンジュン)の小説「남도 사람 (南道の人)」の西便制編と音の光編なのでございますが。ミュージカルのストーリーは、基本映画編を基盤とするものとなっておりまする。

さてこの映画、公開当時の評判たるやすさまじく、ソウルでの観客数が初めて100万人をこえた作品となりました。日本でも「風の丘を越えて」というタイトルで公開され、観客動員数が10万人を超えた初の韓国映画と言われております。「シュリ」以前に韓国映画ファンのベースをつくった一作。韓国映画史においてもかならず言及される名作なのでございます。

f:id:pokos:20170817185334g:plain

 (監督は韓国が誇るイム・グォンテク)

さて、この映画未見のかたはミュージカルを見る前にみるか、後で見るか悩ましいところ。一時期アマゾンなどでDVD価格をみるとびっくり価格(高い)になっており、入手困難な状態でしたが、最近ブルーレイが販売されたようで、価格もおちついてまいりました。

 とはいえ、予習にこの値段はね・・と、TUTAYAカードを手にしたあなた。一応無料で見る方法(合法)がございますので紹介しておきましょう。そもそも、韓国には韓国映画を国家の文化遺産ととらえ、これを収集する国立機関が存在いたしまして。その名も韓国映像資料院。イム・グォンテク監督は韓国映画の巨匠ですから、もちろん資料院にその作品が収蔵されておるわけです。しかも、資料院、収蔵して保存するだけではないのがすごいところ。広く学術研究等に利用されるべく、つくったアーカイブをなんとびっくり無料で見放題なYoutubeで公開しているのです。フィルムアーカイブYoutubeチャンネルは以下。

www.youtube.com

ここの検索窓に서편제といれていただくと、ソピョンジェがリストに上がってまいります。年齢別視聴制限がついておりますので、YouTubeログインして御覧くださいませ。とはいえ問題がなくもない。使用言語はもちろん韓国語。そして字幕は韓国語・英語などが基本でして、日本語がついていないものがほとんど。というわけで、グーグル先生に韓国語字幕を翻訳していただきつつ見ることになるのですが。この翻訳が珍妙な訳になることも少なくない。見ていて不思議とストレスのない作品もあるのですが・・。ともあれ、無料でまずはちらっとみてみて、ガッツリ視聴しようと心に決めてから、TUTAYAに走られてもよろしいのではと。

ミュージカル「インタビュー인터뷰」(2017年版)見て来たよ-最低2回は見たい作品。

報告が千秋楽直前となってしまいましたが、DOUBLE K.Film &Theatreがお送りする創作ミュージカル第一弾。昨年のプレビュー後、京都・東京・ニューヨークでも上演され、豪華キャストで再演された2017年版「インタビュー」。張りつめた空気の中での110分ノンストップ1幕もの3人劇、みてまいりました。本作品は2017年6月1日から8月20日まで、大学路TOM1館で上演中。今週末で千秋楽を迎えてしまいます。報告がおくれてもうしわけございません。もらったチラシには「世界が認める『大韓民国ウェル・メイド』創作ミュージカルの帰還」とありますが、ここでいうウェル・メイドはわかりやすさの意よりは、構成の妙を指すようで。大学路ミュージカルの演劇部門賞をあげたい!と思う「芝居度」の高い作品でした。見て来たキャストはこちら!

f:id:pokos:20170817184600g:plain

ユジン・キム:カン・ピルソク

シングレア・ゴードン:キム・ジェボム

ジョアン・シニア:キム・ジュヨン

ピアノ:キム・スヨン

ある事件の記憶をたどる心理劇

ミュージカル「インタビュー」は、ある連続殺人事件の記憶をめぐる心理劇。とある事件をめぐる心理劇といって思い出すのは、韓国ミュージカルを代表するあの作品。「ブラック・メリー・ポピンズ」。「インタビュー」をみていると、ふと、ブラメポの記憶がよびおこされる。もちろん、まったく異なるお話なのですが、トーンや世界観、空気感(ってなんなんでしょうね)が似ているのです。おりしも劇場はTOM1館(「ブラック・メリー・ポピンズ」上演館)。この世界がお好きな方(私含む)にはたまらん作品でございます。帰りがけに韓国のお嬢さんがたも「ブラメポ思い出したよね」とつぶやいてらっしゃいました。私だけの妄想ではなかった模様。

さてここで、簡単にあらすじを説明しておきたいところですが。この作品、あらすじ説明はオールオアナッシングにしかできない。俳優さんたちのPR動画などを見ても、役どころの自己紹介すら困難な様子。そう、自分の演じている人物が誰なのか、ということ自体がトリックとして物語にくみこまれているのでございます。

www.youtube.com

(「マット・シニア役の・・」と言った瞬間「ネタバレじゃ?」とツッコまれるコ・ウンソンさん)

本作品の物語は循環構造をなしておりまして。最初のシーンと最後のシーンは同じ。しかし観客は最初に感じた印象と、まったく異なる意味を最後のシーンに読み込むことになるのです。舞台上でユジン・キム先生がとる行動は全く同じなのに、その内面が全くことなるものとして想像できるようになる。これ、ホントに1度はあらすじを知らないまま見たほうが幸せな作品です。この落差をどれだけ感じられるかが一つポイントになっておりまして。というわけで、あらすじ回は別記事にまとめたいと思います!

3人の俳優さんの演技力対決!

さて、ちょこっとだけネタバレしますが、本作品にはさまざまな人格をもつキャラクターが登場します。そのため、基本的に会話をすすめていく男性2人の俳優さんの関係性も、場面ごとに変化していく。そしてそれが真なのか偽なのか、観客が混乱させられるところに面白さがあるのです。ですから、俳優さんたちはその場面で設定された人物・関係性こそが真実であるかのように演じなければならない。この演技にリアリティがなければ、この作品は面白くならない。今回見て来たキャストはカン・ピルソク、キム・ジェボム、キム・ジュヨン。その演技力に疑いの余地なしメンバー。キム・ジェボムさんの「子供っぽいー男前ー狂気」のふりはばを一度に堪能できたりもして、「どのジェボムさんがお好みですか?」と試されているかのようでした。

しかもですよ、このミュージカル。全組み合わせ最高なキャスティングで攻めてきているではありませんか。俳優ごと、組み合わせごとに異なる印象をあたえる鬼配役。ほかのキャスト・組み合わせも見たくなる韓国ミュージカルの王道戦略、回転ドア・ホイホイシステム(勝手に命名)導入済みなのです。MDショップ横の再観覧スタンプ列も長くなるというものでしょう。

演劇「スルース」(2017年、韓国キャスト)-チョン・ドンファ、チョン・ウクジンペア再び!

韓国ミュージカルライフと名うったこのブログではございますが、今回は演劇編とまいりましょう。2017年6月2日~7月23日までデミョン文化工場2館にて上演されました、演劇「スルース」。ミュージカル「スリルミー」10周年ロスから立ち直るべく、チョン・ドンファ、チョンウクジン、いわゆるコッ・ニュペアでみてまいりましたよ。歌わないふたりの緊張感あふれるやりとり。ただ残念なのはもうおわっちゃったよ!ということでしょうか。報告がおそくなりもうしわけございませぬ。

f:id:pokos:20170812203600g:plain

アンドリュー(作家):チョン・ドンファ

マイロ(俳優):チョン・ウクジン

枯れた男と野心的な男?

さて、演劇「スルース」は二人劇。人気推理作家と彼の妻の愛人である俳優が登場人物です。作家に呼ばれた愛人は、豪華な彼の邸宅に招かれる。妻と別れろと言われるのかとおもいきや、そこで作家から提案されたのは、ダイヤを盗んだことにして、その保険金を妻の生活費として持参させるので、ひとつ泥棒を演じてくれないか?というもの。提案も提案だが、売りことばに買いことば、いつのまにか乗せられたのか乗せられたふりをしているうちに本当になってしまったのか。俳優は泥棒を演じることに。しかし演じていたはずの「泥棒」という役回り、いつのまにか作家は本気で俳優を「泥棒」として扱うようになり、ついには銃口を向けるのだった。

ーーというような、お話なのですが。

 この作品、作家として名声を獲得したが、男性としての輝きや魅力、能力を失いつつある老境の男、アンドリューが、なにも持たないが生命力と男性的魅力にあふれた俳優、マイロに嫉妬し、自らのプライドを守るためにギリギリのところで彼と知恵比べをする、という部分にポイントがあると思われるのですが。しかしですよ。フェロモン垂れ流しのチョン・ドンファさまにその役は無理だろ、とおもわずにはいられない。枯れたオッさんの哀愁は、残念ながらまだ20年は漂いそうにない。いや、20年たっても、ラテンなちょい悪オヤジ(死語)になると思われる。しかしこの作品においてそれは裏目に出てしまうのです。枯れていない「作家」というのは、「俳優」との間に、持つ・持たないの格差をつくることができないわけでして。他方、チョン・ウクジンさん演じる「俳優」マイロは、どちらかといえば好青年系で、怪しい魅力はやや封印されておりました。なぜに封印?・・。なにも持たないハングリーさに裏付けられ、すべてを掛け金とするような、張りつめた男の魅力といいましょうか。そういのとは方向性がことなっていたような。

というわけでこのペア、息はぴったりで途中のアドリブもいい感じ(ピエロの仮装をする下りでは、ムチャブリなどもあり、大爆笑)。このペアの芝居を観たいと思う観客は多いだろうと思うのですが(もちろん私もその一人)、やっぱりこの作品における、二人の緊張感と奇妙な信頼感の醸成・・という設定には、この二人の息はぴったりすぎる気がいたしました。

もうちょっと、スリルミーから間があいてたほうがよかったのかな(見てるほうも)。